茶会の心得に「一期に一度の会」というのがある。「茶会に臨む際は、その機会を一生に一度のものと心得て、主客ともに互いに誠意を尽くせ」というのが一期一会の語源だ。
私が大切にしている言葉である。
営業活動をしていると、毎日多くの人と出会う。特に、飛び込み営業を行うと、思いがけないほど親切な人や偶々出張先から戻ったばかりの社長さんとお会いできることがある。しかし、相対的には、圧倒的に飛び込み営業はご法度で、煙たがられるとことが普通だ。一般的に考えれば、突然知らない人が尋ねてきて、仕事を中断されることは気持ち良いものではなくて当然である。
しかし、私は、営業の基本は飛び込み営業だと思っている。実は、私は元々技術者から営業に転じたので、どうしたら営業マンとして自立できるか真剣に悩み、誰よりも勉強したと自負している。勿論、机上の勉強だけでなく、実践が伴わなければ意味がいないことも承知している。
多くの経営者から「最近の若い営業は泥臭いことが出来ない」という話を聞く。どうも、若い営業マンは流行のソリューション営業をイメージしているらしく、汗をかいて走り回る営業行為に古臭さを感じているようだ。元来、怠け者の私も、正直言って、しらみ潰しにローラ展開する営業方法は効率が悪いと考えている。
できるだけ、論理的、戦略的に考えて、計画的な方法で、数の論理よりも確率の高い攻め方をしたほうが良いのは当たり前だ。しかし、だからと言って飛び込みをやらなくても良いとは全く思っていない。
なぜなら、私の経験上、飛び込み営業が最も営業力を鍛えるからである。営業力というのは、前述した"論理的、戦略的に考えて、計画的な方法で、数の論理よりも確率の高い攻め方"をすることを言う。つまり、飛び込み営業をしたことが無ければ、どんなに多くのデータを元にマーケティングしても机上の空論にしか過ぎないからだ。
営業をもっと簡単に言えば、受注数を上げることである。
つまり、一ヶ月の受注数が人よりも多ければ、優秀な営業マンと言われ、下回れば無能と言われる。だから、受注数が多ければ、訪問件数など関係ない。もし、100軒周って1件受注できる人であれば、10件受注するためには、十倍周れば良い。しかし、20件受注しようとなると、限られた時間内では物理的に無理が生じる。そのためには、100軒中2件受注できるように確率を上げなければならない。単純に根性では行かないのである。
飛び込み営業して見ると、全く同じノックの仕方で訪問し、全く同じ商品説明をしても、実に様々な反応が返ってくる。
そこで、その一つ一つの反応をどう感じ取るかが重要となる。私の経験上、概ね100軒程度回ると、最悪の場合から最高の場合まで大体のケーススタディが経験できる。
つまり、大体100通りの顧客反応パターンを得ることになる。しかし、能力の無い営業マンは、そのうちのうまく行かない中の大部分は、相手が不味かったと感じる。
勿論、100軒中数件(3件程度)はそうであろうが、そのほかは、パターンを応用化できていないことが多い。パターンをつかめば、次第に確率が上がるはずだ。もし、あがらないとしたら、営業マンの感性が乏しいと考えて良い。
しかし、私が飛び込み営業を薦める最大の理由はこんなことではない。
このコラムを読んでいるリーダを目指す人で、将来、社長になりたいと思っているのであれば、飛び込み営業を経験したほうが良い。
なぜなら、飛び込み営業を経験した人は、飛び込み営業マンの大変さを理解できるからである。
企業への飛び込みでの例で言うと、飛び込んだ時にうまく行くパターンの第一位は、相手が有能な営業マンか、もしくはかつて営業経験のある社長の時だ。前述したように、突然飛び込んできて気分を害さないのだから、興味が旺盛なのであろう。そして、そのような人は、一期一会を大切にしている。経営者であれば、いつどんな出会いが、どんなビジネスチャンスになるか判らないし、どんな人脈に発展するかもしれないと考えているはずである。いや、考えていないような経営者は発展がないであろう。
そうして、一人ひとりとの出会いを大切にしていれば、きっと大きな出会いも訪れることであろう。飛び込み営業は、ほんの数秒間の一瞬の間に、相手から好印象を勝ち取らなければならず、ほんの数分間の間に興味を持ってもらわなくてはならない。その数分間に、自分の持ち味を、全身全霊で集中して表現しなければならず、しかも、何を言ってくるか判らない相手の反応に柔軟に対応しなければならない。だから、人をひきつける人間力が磨かれ、営業力になるのだと思う。
マーケティング能力は、汗をかいた数、冷や汗をかいた数に、その人の感性、創造性を掛け合わせたもので表される。そのためには、一期一会を大切に。無駄な出会いなどない。全てが必要な出会いなのだ。
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投稿者 :堀田信弘: 2005年1月25日 22:57