【堀田信弘の今日の語録】 2010年7月31日 『衰退の陰は、発展と共に常に忍び寄っている。』


起業・独立  「活・喝・勝」


資本金と保証人

一円起業が恒久的な制度として、商法改正させる予定である。また、 有限会社と株式会社との区別もなくなり最低資本金に関する考えが大きく変化しようとしている。

一円起業は、初めて創業するような人を対象に、資本金が一円でも会社設立できるというもので、 5年以内に一定の資本金に増資すれば良いとされている。この制度の趣旨は、 廃業する会社より創業する会社のほうが下回っている日本経済を活性化させ、起業し易いようにしようというものだ。

これまで、株式会社では最低1千万円、有限会社では300万円の資本金が必要であった。これは、若い人が起業を考えた時、 とても大金であり、ひとつの大きな壁である。これを撤廃すると言うことは、起業への障壁が無くなり、挑戦しやすい状況となったと言える。

しかし、そもそも資本金とは何のためにあるのか。

会社には、無限責任会社と有限責任会社の2つがある。前者は、合名会社や合資会社が該当し、会社が倒産した時には、 その出資額には関係なく責任を負うことを言う。後者は、有限会社と株式会社が該当し、出資額に応じて責任を負うことになる。

個人事業主や無限責任会社の場合は、多額の借金をして倒産すれば、その借金に対し全額責任を負わなければならない。しかし、 株式会社の場合には、資本金の範囲内で責任を負うため、責任範囲が限定的となる。

つまり、一円起業で有限会社を設立した場合には、借金に対し一円だけ責任を負えば良いということになる。これは何を意味するか。 確かに起業への障壁が無くなり、挑戦しやすくなったと言えるが、もしあなたがお金を貸す側であったとしたら、その会社にお金を貸すだろうか? 事務所を貸してくれるだろうか?車やパソコンのリースの審査が通るだろうか?

ここ5年間にこの制度を活用して、既に一万社近い会社が設立されたそうだ。しかし、実態はどうか。その大半は無くなっている。勿論、 資本がなくてもやれている事業がないわけではない。

そもそも、株式会社などは、会社が潰れても、夜逃げや一家心中などないように、 資本金という名の信用で事業ができるようにしたものである。しかし、実はここには日本独特の矛盾が隠されていた。

会社が次第に成長していくと、売上が数億円になり、多額のお金が動くようになる。ところが、資本金が責任の範囲内だとすると、 資本金を増資しようとしない会社が現れる。特に、IT業界では、売上が何億円で資本金1千万円という会社が相当存在する。 別に罰則はないから、できれば資本金はいじらないようにと考えている。

そこで登場するのが保証人という制度である。この制度は、世界中で日本だけだそうだ。会社の取締役が個人で会社の保証人となり、 個人が借金の責任を負うというものである。資本金だけでは信用ならないため、個人にその肩代わりをさせようという制度だ。つまり、 会社が倒産すると、取締役は、個人の財産が没収されるということになる。

一円起業で創業しやすくするのは良いが、資本金という有限責任の考えを捻じ曲げることにならないか。しかも、 国際的に非難されている保障人制度、さらには国際会計への取組など、日本の経営者意識の低さはこれで良いのであろうか。

有限会社を作るための300万円が集まらない人が、起業家として成功できるのであろうか。遊びで乗る車が買えるのであれば、 アルバイトでも何でもして本気でやる姿勢を、お金という結果で表すことが必要なのではないだろうか?

実際に経営をしてみると、どんなに優れたアイデアでも最後は資本に泣かされる。資本が無くては商売ができないのが、 資本主義の原則である。綺麗ごとでは始まらない。その現実を理解させるための資本金制度は必要なのである。そして、経営者になったなら、 資本という信用のために、増資を考えるべきである。そして、それを徹底させることによって、悪しき保証人制度を禁止すべきである。これが、 本来の有限責任の考え方ではないだろうか。一円起業制度は、無限責任への流れをより一層強めることになり、時代を逆行するようなものだ。

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投稿者 :堀田信弘: 2005年2月27日 10:34