マネージャーとリーダーというのは、全く異なる職種である。日本語で言えば、管理者と指導者ということになるだろうか。
このコラムでは、ずっとリーダーについて論じてきたが、日本ではマネージャー(管理者)との違いを混同して理解している人が多い。
マネージャーとリーダーとは、全く正反対の特徴を持った職種である。例えば、マネージャーは、保守的(守備的)であるがリーダが革新的(攻撃的)であると言えよう。マネージャーの役目は、管理することであり、対象物を一定の枠の中に置いて、その様子を観察し、枠からはみ出ないように全体を整えるのが仕事だ。
一定の枠とは、時には時間であったり、金額であったり、量であったりと様々であるが、とにかく与えられた枠の中でピタリと納めることができるかが重要となる。
IT業界で言えば、プロジェクトマネージャー(PM)の役目とは、営業から与えられた予算と納期が枠ということになる。
この枠の中の権限を有し、外注管理からプロジェクトの進捗管理を行い、与えられた予算内で納期に間に合わせることが有能なPMである。
ところが、プロジェクトとは不思議なもので、有能なPMのはずなのに、予算も納期も越えそうになることは多々発生する。こんな時、有能なPMは、枠の中の権限で考えるから、それ以上の外注費も使えなくなり、残った皆が徹夜で仕事をすることになっても納期に間に合わないという事態が発生する。
ところが、無能なPMは、外注費か納期かの何れかを崩すことを考える。つまり、与えられた枠を超えたことをやろうとする。当然、お客さんのほうが重要だから、多少の外注費がオーバーしても納期を守ることに専念する。逆説的な言い方をすれば、この無能なPMこそが、リーダーなのだ。
一般的にマネージャーは、現実主義で、リーダーは理想主義と言われる。マネージャーは、外注費と納期の両方の現実を痛いほど把握しているため、これ以上、人や金も時間もかけられないと考えてしまう。
しかし、リーダーは、理想主義のため、もう使えないはずの金まで何とかし、その見返りに納期だけは守ろうとする。
しかし、プロジェクトマネージメントの世界では、一般的にリーダーは無能である。細かい内容は把握していないし、繊細なスケジュールやガントチャートは作成できない。これらのスタッフ能力はマネージャーのほうが遥かに向いている。
このようにマネージャーとリーダーの役目は違うのであって、混同した考えから人選を誤ると適材適所とならないことが起きる。
管理者イコール管理職という図式がそもそも誤解を生んでいるが、管理者というのは、タレントの世話をするマネージャーのことと同じで、本来は管理職という意味ではない。
日本では、ピラミッド型組織が長く続いたため、横の組織間連携が育たず、チェックしたり承認したりする人は、上の人が行うものとされてきた。本来であれば、上司ではなくマネージャーという職種の人が行えばよいだけのことなのだ。
では、リーダーの役目とは何なのか。一言で言えば、冒頭に書いた指導者であるということだ。マネージャーは、枠の中で考えるため、与えられた範囲でしか動けない指示型のタイプである。しかし、リーダーの役目は、枠の外で仕事をすることが多い。
権限は与えられたものではなく、自ら広げる能力を持っている。つまり、あるものではなくないもの、これまでのことではなくこれからのことなど、未知への判断が要求されるのである。
マネージャーは、頭で考え、最も最適な解を見つけるのが仕事である。通常は、論理的な人は、マネージャーに向いている(左脳型とも言えよう)。一方リーダーは、心で考え、部下にやる気を出させようとする。時には、大声で叱り、時には一緒になって成果を喜び、部下の心に火をつけるのが上手い(右脳型人間だ)。
勿論、両方の能力を兼ね備えているほうが良い。しかし、現実には、名選手、名監督に有らずと言われるように、そう簡単には行かない。
むしろ、何れか一方を見極めて、自己分析を正しくしたほうが成功の割合は高くなるであろう。
ところが、稀に名選手、名監督というタイプがいる。プロ野球で言えば、落合博光がいる。彼は、日本でただ一人、名球会入りを断った人だ。オレ流という言葉があるが、名誉や地位、過去の実績にとらわれない人である。オレ流を部下に押し付けない、俺がオレ流だから、部下にも自分流をさせる。
だから、自分のかつての栄冠や才能を表に出さない。部下ととことん付き合う。
ここに一つの答えがある。自分で自分のことを有能な力があると思える人は、リーダーに向かない。マネージャーになったほうが良い。もし、そのような考えでリーダーを目指したら、組織の発展は望めない。
もし、そのような人がリーダを目指すのであれば、バカになることだ。知識やテクニック、理論を捨てることだ。そうでなければ、自分よりも有能な部下を持つことだ。そして、それにマネージメントを任せることだ。
落合がそうであったように、部下から学ぶことは実に多い。できの悪い部下ほど可愛く思える。部下に感謝を持つ気持ちを持ったとき、リーダーになれるのかもしれない。部下を愛す心があれば、強く叱っても理解される。
その人の理論が間違っていても、何とかしようと考えてくれるはずだ。指導者とは、指導される側の心を理解することが最も大切な仕事なのかもしれない。
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投稿者 :堀田信弘: 2005年3月21日 09:40