【堀田信弘の今日の語録】 『この会社は、きっと伸びるだろうな。他の会社と違うことができること自体に可能性を秘めているから。』


IT業界について  「活・喝・勝」


IT業界の営業不要論

以前の会社で営業部門を立ち上げるのに、会社設立から10年費やした。IT業界では、古く前から営業不要論が根強くある。理由は二つ。

一つは、社長が技術系出身者だと、ソフト業界は、技術があれば食べていけるという論理。二つ目は、人的投資及び事業拡大を視野に入れていない社長で、営業のような金の掛かる間接部門は不要だという論理だ。

たしかに、この業界特有のスピンアウトによる独立では、仲間や部下数人と会社を作るケースが多いため、数人の技術者のために営業など雇えないという実情も判る。社長自身が営業マンとして、これまでの付き合いのあるメーカや同業他社を回れば、数人を食わせることは可能だ。

「ニワトリが先か卵が先か」という議論がある。営業マンが先か、大きくするのが先かという議論だ。

このような小さな会社だから雇えないのであって、雇いたく無い訳ではないと言う。会社が成長すれば、必ず営業は必要になるから、それまでは社長や管理職が営業を代行するというのだ。

この話は巷でよく聞く。つい最近は、100人以上もいる中堅の会社で営業部を廃止しようとしているという話まで聞いた。

ソフト業界黎明期の名残が現在まで続いている。メーカの下請けで仕事をもらうことから誕生し、人を集めて常駐させれば、自分のところのリスクは極めて少ない。メーカと接待でもしていれば営業など無くても、人さえ集まれば十分にやって行ける。

そのモードに入った社長に、「ニワトリが先か卵が先か」という資格はない。そんな社長では、
どんなに大きくなっても営業を持つことなど出来ない。

経営というのは、大きくするためにやるのであって、大きくなってからするというのでは経営ではない。営業がいると大きくならないのか、営業を持つことで大きくするのかは意味が違う。

そもそも、会社にとって営業はなぜ必要なのか。もっと判りやすく言えば、商売にとって営業は不要か。

サービス業で営業のいらない商売などあるのだろうか。

まず問題なのは、営業がいなくても食える業界の体質にある。独立した次の日から金が動くような仕組みになっており、商売など考えなくてもなんとかやっていける。そのため、月日が経つにつれて、戦略的な攻めの経営ができなくなって行くのである。

そうしている間に、社員の年齢があがり、総人件費が経営を圧迫した頃、メーカからの取引も少なくなり、単価も下がって八方塞がりとなる。

そうなってからは、とても営業など持てる体質にないため、企業規模を縮小して経営を維持しようとなる。

つまり、ゆで蛙状態なのである。厄介なのは、問題がゆっくり進行するため、お湯加減が変わって行くことに気づき難い。

徐々に悪化していくが、経営の問題ではなく、外部環境の問題とすりかえる。メーカや景気が悪いから、今は辛抱時とのんきなことを考える。

でも、そういう会社には、決して景気の良いときなど現れない。

経営は、コトを起こさなければ何も起きない。起きないどころか、必ず悪化する。現状を維持するためにも最低限のコトを起こさなければ、維持することは困難なのだ。だから、何かの仕掛けが必要なのである。

私が営業を必要だと言う理由には、二つの考えがある。一つは、将来への投資である。できるだけ攻めの体質を作るためには、常に新規顧客開拓が重要なのだ。それには、時間がかかるかもしれないが、社長の給与を削ればできない話ではない。

二つ目は、リサーチである。マーケティングとも言える。社長の交友範囲は、類が類を呼ぶでどうしてもマンネリ化してしまう。

そこに全く別次元のリサーチ力のある営業が業界を客観的に見聞きし、最新動向をキャッチするのである。

そうしたことは、別に営業でなくても管理職が兼任すれば良いという反論がある。それほど優秀な管理職ならば言うことはない。

早くその管理職を独立させて、分社化したほうがマシである。社長ができないのに管理職ができるはずがない。

ましてや社長が兼任で良いと考えている会社で、私が言う営業がそんなに簡単にできるはずがない。そんなに世の中は甘くないのだ。

日々汗をかいている営業は、この辛さを知っている。知らないのは、営業経験がない社長。そんな人が、営業の要、不要を言う資格はない。

正しく言えば、そういう社長の下には、むしろ営業など置かないほうが良い。きっと上手く行かないから。

私が何年もかけて必要性を訴えたかつての営業部門は、私が去るのと同時にきっと無くなるだろう。

最後まで読んで頂き、感謝申し上げます。

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投稿者 :堀田信弘: 2005年4月21日 10:09