【堀田信弘の今日の語録】 2010年7月31日 『衰退の陰は、発展と共に常に忍び寄っている。』


組織について  「活・喝・勝」


目指すアメーバ型組織

指揮者のいないオーケストラとして知られるオルフェウス室内管弦楽団。1972年に米国で創設されて以来、世界的な管弦楽団として唯一指揮者なしの活動を続けている。

指揮者と言えば、管弦楽団にとって欠かせないリーダーのはず。では、指揮者がいないオルフェウス管弦楽団にリーダーが不在かというとそうではない。メンバー全員がリーダーで、局面によって最適なメンバーがリーダーシップを発揮する。自分のパートでは、自分がリーダーシップを発揮するのだ。

リーダーがリーダーシップを発揮するのではなく、リーダーシップを発揮する人がリーダーなのだ。

これまでの企業は、年功序列で管理職になり、管理職になるとリーダーシップが求められるようになる。リーダーとして、能力のあるなしに関わらず、部下を持った管理職はリーダーシップを発揮しなければならなくなる。

管理職だからリーダーとしての素養が要求されるのである。

しかし、これは、役につけばそれらしくなるという古い考えに基づいたものであり、誤った考えだ。本来であれば、リーダーシップをとれる人がリーダーになるべきで、リーダーシップが取れない人がリーダーになることは、組織にとって悲劇的だ。

99匹の狼を率いる羊がリーダーの組織よりも、99匹の羊を率いる狼がリーダーの組織のほうが遥かに強い。それだけ、リーダーの存在は重要なのだ。組織にとって、たった一人の優秀なリーダーを持つ意味は実に大きい。

ところが、オルフェウス室内管弦楽団は、たった一人の指揮者というリーダーを持つのではなく、
27人ものリーダーがいるという超理想主義の組織体である。

指揮者がリーダーではなく、それぞれのパートを担当する人がリーダーとして、自分のパートを通じてどうすれば素晴らしい演奏ができるかを提案する。『オルフェウスプロセス』(ハーヴェイ・セイフター、ピーター・エコノミー著)に書かれているオルフェウスの八つの原則を紹介すると以下のとおりだ。


  • その仕事をしている人に権限をもたせる

  • 自己責任を負わせる

  • 役割を明確にする

  • リーダーを固定させない

  • 平等なチームワークを育てる

  • 話の聞き方を学び、話し方を学ぶ

  • コンセンサスを形成する

  • 職務へのひたむきな献身


全員がリーダーの究極の超理想主義組織体は、逆説的に考えれば、形だけのリーダーを置く組織よりもましという意味で超現実的な組織かもしれない。

今、ソフトウェアの世界では、リナックスに代表されるように、オープンソースのプログラムが急速に発展している。

世界中の人が公開されているソースを元に、自由に改良を加え、数々の部品が生まれ生産性が高まり、無数の組み合わせによってアプリ開発が容易になった。

言わばこれは、インターネットを通じて無限に広がったアメーバ型組織の成功例だ。情報公開と責任委譲によって、急速な発展を成し遂げた姿は、オルフェウス室内管弦楽団の超理想主義組織が目指す姿に似ている。

基本的な骨格だけを決め、再配布、再構築を可能にするこの考えは、未来の企業組織にも適用できるはず。

もう一度、オルフェウスの八つの原則を見てみると、「話の聞き方を学び、話し方を学ぶ」というのがある。これは、リーダー同士の紛争を予想して、対話によって対立を防止しようという考えが込められているようだ。

リーダーが複数いれば、必ず対立が生じる。一人のリーダーが意思決定するのと異なるのがこの点だ。アメーバ型組織の弱点は、無作為な増殖によって色々な方言ができ、再配布、再構築ができなくなることである。いわば、自己主張が最初の方向性と序所にズレ、折角の部品が融合しなくなることである。それを、「基本的な骨格だけを定める」という最小限のルールを設けることで、防いできた。

オルフェウスの「話の聞き方を学び、話し方を学ぶ」というのは、リーダーシップを取る人が多くなると必ず対立することが予想されるから、コミュニケーションを重視しているのであろう。

どうやら、アメーバ型組織の成功の鍵は、情報公開、権限委譲と、最低限のルール維持の3つが大切なようだ。三番目の「最低限のルール維持」をどう制定するかによって、発展のスピードとそれに相反して対立の発生が生まれるのだ。対立は生まないのではなく、ある程度生まれることを前提に、どれだけ再配布、再構築可能になるかを考えるべきなのだろう。

企業で言えば、それは、経営理念なのかもしれない。その理念がDNAのように生きれば、ある程度無作為に増殖しても、目指すべき方向性は同じということになる。コアの部分をしっかり固め、周辺は自由にスクラップアンドビルドができる形が望ましい。

ひとつの会社の中の組織で言えば、ピラミッド型組織の場合、2つの部にそれぞれ3つの課があって、課の中に主任を数人ずつ置くと、それだけ20人になる。120人ほどの会社の場合でこの例のようになる。部という共通の事業目標が2つのために、残りの18人は、その補佐役の中間管理職である。

これをアメーバ型組織に変更すると、20の小さな事業目標を設定することができる。その20事業を事業部制にして、主任以上を全て事業部長にする。20の小さな事業部は、それぞれが競いあい、部長も課長も主任も事業部長として、ただ事業部の成績を高めることに専任する。

新たに若いやる気のある主任候補が現れたら、新しい事業部をつくり、組織を再編する。また、突出して成長力のある事業部が現れたら、分社化して、その事業部長を社長にすれば良い。

アメーバ型組織には、中間管理職というのは必要ないのである。完全フラットな成果主義型で、自己完結する事業部型の組織である。

つまり、管理職が間接費とならず、常に自ら行動する部隊長として動くため、圧倒的コストパフォーマンスが高まること間違いない。

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投稿者 :堀田信弘: 2005年4月17日 15:36