お店に設置してあるトイレに行くと、そこ経営者の思想が見えてくる。
駅のような公共施設のトイレには、「みんなが利用するトイレです。キレイに利用しましょう。」と書いてある。
ある小さな本屋のトイレには、「このトイレは、わずかな利益の中からトイレットペーパーと掃除費用を出しています。キレイに使って下さい。」とあった。
「もっと前へ、そしてもう一歩前へ。」というような面白い電器店もある。
先日、あるスーパーのトイレを利用したところ、「いつもキレイに使って頂いてありがとうございます。」と書いてあった。
どこのお店でも言いたいことは同じだ。しかし、言い方次第でこれほど印象が変わるのだ。
店側の気持ちとして、トイレを「使わせている」の感覚が強いと、注意や指示の口調となる。買い物に来たお客さまにトイレを「使ってもらっている」というところまで来ると、その表現は大きく変わる。
ちょっと聞き慣れない言葉ではあるが、エモーショナルマーケティングという概念がある。
エモーショナルマーケティングとは生活者の意識や感情に訴えかけることを主目的にしたマーケティング手法のことである。
通常マーケティングとは、生活者のニーズを把握し、そのニーズを満足させらせる商品を開発・販売していくプロセスであるという意味に於いて、統計学であり社会科学的である。
しかし、エモーショナルマーケティングはこういった科学性とは無縁な、いわば心理学に近い手法である。
この概念から行けば、どうせ言うなら、言われた側のことを考えて言ったほうが効果的だ。
どこのお店にもトイレはあるわけで、お客にトイレでお店の差別化が図られることだって十分にある。お客は、ほんの紙一重の差で、お店の差別化を行っている。
商品やサービスはもとより、駐車上のスペースから、店員の接客まで、総合的に判断している。トイレについても、お客は利用できない従業員専用となっていたら、やはりポイントは大幅に下がる。
「いつもキレイに使って頂いてありがとうございます。」と書かれたトイレは、トイレをひとつのサービスの一環と考え、実に真剣に考え抜かれたものだ。どのように差別化するかということをいつも真剣に考えている経営者の心理が見える。
それに対し、「このトイレは、わずかな利益の中からトイレットペーパーと掃除費用を出しています。キレイに使って下さい。」と言われると、店のプラスイメージには貢献できない。
もちろん、人によってはマイナスにはならないと感じるかもしれないが、本屋の本はどこで買っても同じな訳で、どうせ買うならゆっくり選べて、品物が多くて、トイレも汚いよりはキレイのほうが良いに決まっている。
商品の差別化が難しい現代では、無形のサービスに対する差別化が重要である。サービスとは、形にはないものだが、目に見えるようなサービスにすることは重要である。有形な商品は、手をとって比較され、価格比較されるが、無形なサービスはお客さまの心をつかむことである。
アルバイトに定期的に清掃をさせているファーストフードのトイレには、何時に誰がチェックしたか表になって貼ってある。これは、客に定期的に掃除をしていることをアピールしているのである。
お客の心をつかむには、客に感動を与えなくてはならない。感動は、常道のやり方ではダメだ。
チェック表が貼ってあるだけでは感動は起きない。客の予想を上回ることをしなくては感動は生まれないのである。ちなみに、ディズニーランドのトイレにはこのようなチェックシートは貼っていないが、もちろん定期的に清掃している。
トイレひとつとっても、真剣に客の心理を考えれば、いろいろなアイデアが生まれてくるはずだ。ここにサービスの面白さがある。
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投稿者 :堀田信弘: 2005年5月 1日 23:55