90年代初頭からのバブル期、日本の平均賃金は上昇を続け、日本人は誰もが中流意識を持っていた。一億総中流階層と言われた。
平均賃金は2000年に入って一転し、低下の傾向を続けている。
一方、平均貯蓄額は、現在でも上昇を続け、家計の金融資産額は1400万円(2004年調査)を突破した。
恐らく大部分の家庭では、貯蓄が1000万円以上もあるところは少ないだろう。それはそのとおりだ。平均賃金が低下しているのに、平均貯蓄額が毎年上昇しているのは、数字のズレがあるからである。
これまで日本は、賃金にしろ、貯蓄額にしろ、平均値と中央分布値(80%タイル値)には相関があった。そのために中流意識が起きたのだ。
ところが、ここ数年、平均値と中央分布値に大きな差が生まれるようになった。
貯蓄額で言えば、中央値は毎年低下を続け、800万円を切っている。つまり、一部のお金持ちが、平均値を上げ、その差が拡大しているのである。平均値が上昇すると言うのは、わずかな上位者の値が大幅に上昇しているからなのである。
全体的の大部分を表す中央値は減少しているのに、平均値が上昇するから次第に感覚がズレていくのである。
中央値が下がるというのは、下位者の値が大幅に減少しているからである。
不景気のどん底と言われた90年台後半から2000年、生活保護を受ける人の数は横ばいであった。ところが、2000年を境に毎年増え続け、厚生労働省の予算額は、期首当初を大幅に超え、毎年補正予算を組むような事態になっている。
一言で言えば、貧富の差が拡大しているのだ。
お金持ちが増え、お金を使えば、お金が回って全体が潤う。バブル期は、一部の土地成金がそのような形を形成したのである。ところが、現在は、明らかにお金持ちが増えているのに、貯蓄額が増えるだけで、お金を使っていない。
平均貯蓄額が1400万円と聞いて、明らかに疑問を感じている人が増えているということは、
完全に平均値とのかい離が起きているのである。
一億総中流階層は崩壊した。
数%の上流階層と90%の中流階層、数%の下流階層であったのが、上流と下流がそれぞれ増加し、中流階層が減少しているのである。
これは、企業においても同じようなことが起きている。上場しているほんの一部の企業は好業績が続き、弱い企業は淘汰されている。
このことは、今後のビジネスマーケットを考えるとき、平均帯で見るか、中心帯で見るかの違いを理解するのに重要なことである。以前は、平均と中心が相関的に近い関係を持っていたので、平均であれ、中心であれ同一と捕らえていた。
消費者が購買したいと思う意識は、自分の価値軸よりも上位の軸にある商品である。上位の軸というのは、品質、価格などトータルな価値である。購買という欲求は、自分の価値軸よりも下のものには起きないのである。だから、あこがれのものを手にしたいという欲求があらわれるのだ。
もし、中心帯をターゲットにすれば、自分の価値軸とほぼ同等となり、欲求といえるほどの感情は生まれない。あたりまえの価値であって、ほしいとは思わないのである。
平均帯をターゲットにすると、少し背伸びしなければ届かない自分の価値軸よりも上になる可能性が高い。
平均1400万円を保有する層をターゲットにすれば、中心帯の人はそれを真似るように動くに違いない。
今後は、さらにこの平均帯と中心帯の差が広がるだろう。そのことを意識した戦略が重要である。マーケットのターゲットは、常に少しだけ軸を上に持って行くことが重要なのだ。上過ぎても下過ぎてもいけない。
そこにヒットラインがある。
中心帯の現状ニーズにあわせるのではなく、それより少し上の層向けのシーズ商品が鍵だ。
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投稿者 :堀田信弘: 2005年6月 3日 07:45