【堀田信弘の今日の語録】 『この会社は、きっと伸びるだろうな。他の会社と違うことができること自体に可能性を秘めているから。』


IT業界について  「活・喝・勝」


規制か緩和か

自社の労働者を他社に派遣して働かせる労働者派遣事業は、第二次世界大戦後1940年代頃アメリカで生まれた。 電子計算機のオペレーターが最初であったと言われている。最初の人材エージェント会社は1947年だそうだ。

日本では、1960年代後半頃から、アメリカの大手人材エージェントが進出してきた。その後、1970年代後半になって、 システム開発や情報処理分野で急速に拡大した。

しかし、その当時は派遣法もなく、日本の労働法制のもとでは、もともと「雇用されて働く正社員」を前提として規定されており、 派遣労働は禁じられていたため、形式的に指揮命令権を派遣先に委ねない"請負"という形で契約していた。

産業界では、不況時の労働力の調整弁として、いつでも雇用調整ができる使い勝手のいい労働力を必要とするようになり、 派遣会社と共に国に法律の制定を求めた。

政府与党は、こうした産業界、派遣業界団体の要請に応じ労働者の派遣を解禁するための法整備を行った。しかし、野党は、 不安定雇用の増加につながり、正社員のリストラが相次ぐと一斉に反発した。また、派遣社員の人権や身分が守られないとして、 法律での規制を求めた。

そして、与党は、ついに野党の反対を押し切って、1986年労働者派遣法が施行された。

このときの派遣法では、"請負"という名の元に事実上自由に行われていた労働者の派遣事業に対し、一定の規制を設けることで、 野党が主張する「不安定雇用の増加につながる」ことのないように歯止めをかけた。派遣労働者を臨時的、一時的な労働をする人と位置づけて、 派遣を認める業務をOA機器操作やファイリングなどの16業務に"限定"して派遣を認め厳しい規制をかけた。

また、非正社員である派遣社員の身分を守るための法律であることをうたい、実際には"派遣の解禁"であるはずのものを"規制" というオブラートに包んで色を変えた。

産業界が求めた自由な派遣サービスの解禁は、派遣社員を守るという目的の法律によって、ゆっくりとスタートを切った。

その後、日本国内では、バブルが崩壊し、産業界があたかも予想したかのように、大企業を中心にリストラが進み、 大量の正社員減らしが起こった。失業率が高騰し、否応なしに非正社員にならなければならない人が増大した。

リストラ社員の受け皿となるために、大企業は自らの子会社に派遣会社を設立し、派遣サービスの競争が激しくなった。

1996年に派遣対象業務を16から26業務に一気に拡大し、研究開発や事業企画・立案などの業務も加わえ、 これまでの規制を緩和した。さらに、99年には、これまでの限定業務での派遣から原則自由化とする法改正を行い、 一部の業務を規制する大転換を行った。それによって港湾運送、警備、物の製造や建設、医療業務への派遣については禁止したものの、 そのほかは原則自由となった。2000年には紹介予定派遣も解禁となって、医療業務での派遣も事実上行えることとなった。

2005年2月に発表された厚生労働省の調査によれば、2003年度の派遣会社は、 全国に7,670事業所、特定労働者派遣事業所は9,134もの事業所があり、派遣労働者数は236万人になっている。

もともと派遣法では、派遣労働者を「臨時的・一時的な労働をする人」と位置づけていたが、現在では労働者の3人に1人が非正社員となるなど、労働市場が大きく変化してしまった。

派遣社員の身分を守る目的から施行された労働者派遣法は、最初に産業界が求めたとおり原則自由となり、「正社員の代替」 防止がなし崩し的に破られていったのである。

このように、日本では、これまで認められていなかったことをやるためには、やれるようにするための法整備から始めることが多い。 新しい法律ができると、必ず規制が入り、役人の既得権益が生まれる。

IT業界で言えば、事実上、最初に派遣ビジネスを始めたのは、大手メーカの下請けであるソフトハウスである。しかし、 法整備がされていない状態で行うには、"請負"というグレーな形で行わざる得なかった。

しかし、情報サービス産業以外の事務派遣などを中心とした派遣会社は、ソフトハウスと違って、法的担保がなければ責任を取らされる" 請負"はできなかったのである。そのため、新しくできた業界は、法整備と共に、さらに規制緩和と共に市場を拡大していった。

一方の"請負"という名で行っているIT業界には、派遣への切り替えが求められ、 古い体質の業界が新しくできた業界に従わざるえない形となってきた。

もともとアメリカで生まれた人材ビジネスであるが、アメリカには日本のような派遣法はない。二重派遣も何でもありである。

そもそも、アメリカの労働者は、会社と対等の関係である意識が強く、リストラやペイオフも盛んで、自ら職場を選ぶ能力が高いのである。 だから、日本のように法律が派遣労働者を守るようなものは必要なく、派遣会社は仕事を紹介してくれるだけのものという認識があるようだ。 給与がよければ二重でも三重でも構わないし、イラクにだって派遣する会社だってある。選ぶのは労働者なのだ。

 

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投稿者 :堀田信弘: 2005年9月 2日 15:00