「義務教育費国庫負担制度」とは、全国どこにいても子供が一定の義務教育を受けられるようにするため、国が1/2を地方自治体が残りを負担し、地方の財政力によって格差が生じないように、必要な教員数を確保する制度である。 この予算は、2兆5千億円で、防衛関連予算の約半分だ。
「小さな政府を目指す」小泉首相は、この制度を廃止し、地方に財源を移し、その換わり地方に負担してもらおうと考えている。 そうなると、地方格差が生じることになる。そもそも義務教育とは何なのか。
日本国憲法では、国民に三つ義務「勤労の義務」「納税の義務」「教育の義務」を規定している。憲法で義務を負わせながら、 同じ国の中で、受けられる教育の格差、例えば少人数学級や、複数教師による指導などで不公平が生じていいか。
憲法では、「教育の義務」を、「子供が教育を受ける義務」ではなく「子供に教育を受けさせる義務」と規定している。つまり、 「勤労の義務」「納税の義務」と同じ、「教育の義務」は、何れも大人に課せられているのだ。
大人が義務を放棄しようとしている国で、子供が健やかに育つはずがない。
引きこもりの子が学校に行かないのは、子供が悪いのではなく、大人が悪いのだ。子供が学校に行きたくない理由は何故なのか、 どうしてそうなったのか、なぜ子供が悩んでいるのか、もっともっと大人が悩むべきである。心を閉ざしている子供は被害者で、 大人は閉じている心を開くための努力をする義務があるのだ。
なぜこのような社会になったのか。どうして、大人はこのような社会にしたのか。
子供が増加していた時代、国は何をしてきたのか。その結果、なぜ子供が減少するようになったのか。 学校に行かなくてもいい社会にしたのは誰なのか。
わが国が支出する義務教育費(公財政支出教育費)は、OECD加盟国の中で11位だ。防衛費世界第4位の国が、国が出す教育費は多いほうでなく、GDPに占める割合を見ると、OECD加盟国の中で最も少ない。
義務教育でさえそういう状態だから、今や95%以上の高校進学率がある高等教育の公財政支出教育費はもっと少なく、 OECD加盟国の平均を下回り、19位となっている。世界的にも、日本は、高校生を持つ親の負担がいかに大きいかが判る。これでは、 沢山の子供を養うのは大変だ。
日本が高度成長を向かえる前の昭和30年後頃、国の一般会計予算に占める文教関係費は、公共事業関係費の18%に次いで、 13%を占めていた。戦後の復興とあわせ、いかに教育を大切にしていたのかが読み取れる。
その後、しばらく文教関係費は横ばいが続いたものの、社会保障関係費が大幅に増加し、現在では、社会保障関係費の41%に対し、 文教関係費は10%に下がった。GDP比で見ると、文教関係費は1.1%で、防衛費とほぼ同じに下がった。
日本の義務教育期間9年間は、アメリカ、ドイツと同じ世界で最も長い。 資源がなく教育によって人材を育てることで発展してきた教育大国であった。
それが、戦争を放棄しているはずの国が、世界第4位の防衛予算を持ち、その代わり未来を託す子供たちにお金を使わなくなった。 それでも、高度成長期以降、順調に税収が増えていたため何とかやっていけた。ところがバブルが崩壊し、企業は倒産、リストラを余儀なくされ、 税収は減り、国の借金が膨れ上がった。
企業は、金の掛かる年配者の雇用を避け、若くて有能な人材だけを正規雇用した。狭き門になった若者は、非正社員に流れ、 やがて給与が変わらないと知ると、フリーターが生まれた。
刻々と平均寿命が延びているのに、企業の定年制の廃止は未だに行われない。その結果、60歳で定年を向かえると、 優雅な年金暮らしとなり、元気で若いお年寄りは、ゲートボールやゴルフを楽しむ結果となった。
働くなくても食べられる親を見て、その子供は30歳を過ぎても働かず親に食べさせてもらうニートが誕生した。「勤労の義務」 「納税の義務」が崩壊した。
年金制度も破綻し、社会保障費が莫大になった。働けない年寄りと、働かない若者が増え、少子高齢化社会となり、 人口減少国家に墜落した。悪のスパイラル。慌てた政府は、「小さな政府」を目指すと、わが国発展の原資である教育にメスを入れようとしている。
「小さな政府」を目指すなら、防衛費を削れ。世界第4位の防衛費は、この小さな国を守るには大きすぎる。
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投稿者 :堀田信弘: 2005年10月 4日 15:39