来週月曜日、長男が小学部の卒業式を迎える。6年前の入学式、私が父兄代表と謝辞の挨拶をしていたとき、息子は、大声を上げ、 不安そうにウロウロして席に着くことさえ出来なかった。
その当時、彼が話せた単語は「パパ」だけ。障害認定の検査で3歳に満たない程度の能力だった。
障害を持つ親にとって、人生の中で最も悲しみ悩むのは、3度あるそうだ。
1度目は、その子が生まれた時、或いは障害があると知ったとき。人生の中で最も嬉しい出来事の直後に、 天国から地獄に落とされるような想いを経験する。つい先ほどまで、神様に子供を授けて頂いて感謝していたのに、神様を恨むようになる。
泣いて泣いて、泣きかれると、やがて泣いていても何も好転しないことに気づき始める。すると、今度は、神様が、 「君たちならこの子を見られるはずだ」として授けてくれたんだと前向きに捕らえられるようになる。
同じ障害を持つ親と出会うと、「これからこのような経験をするもの」と話を聞いてもピントこない。
幼稚園に入るとき、障害児を受け入れてもらえない現実に直面する。世の中、政治、社会を憎く思う瞬間。長男は、 家内が毎日送り迎えをして、30キロも先の隣の隣の市の幼稚園に3年間通った。
そこの幼稚園は、障害児を受け入れるのが初めてであった。そのため、わざわざ、 うちの子を専任で担当する障害教育の専門家を採用してくれた。その幼稚園は、その後、障害児と健常児が交流する幼稚園として発展している。
幼稚園の頃、知能は2歳程度。でも、周りの子が5歳だから、それほど、遅れを感じない。しかし、運動会、 お遊戯会では何もできないわが子を見て、抱きしめたくなる。行事に参加させたくない気持ちまで生まれる。でも、彼は、そんなことも知らず、 行事にでると、先生の制止も聞かず楽しそうに走り回っている。親のエゴに気づく。
2度目に悲しみ、悩むのは小学校に入学する時。
明らかに障害の認定を受けていても、どんどん良くなるはずだと思っている。しかも、障害の重さについて、 重度と言われても重さが理解できない。もしかして、普通小学校でも何とかなるのではと考える。
入学前に教育委員会や学校と話し合い。「難しい」と言われれば言われるほど納得行かない。先生と話し合いをしているとき、息子は、 他の子供達と遊ぼうとしていた。その時、子供達に「何だコイツ、話ができないや」と言われる。涙がこぼれ、 養護学校に入学することを決心する。
養護学校では、同じような障害を持つ子、身体障害も併せ持ったもっと重度の子がいる。すぐに、親同士が仲良くなる。6年間、 正確に言うと、養護学校は、その後の中学部、高等部と小、中、高一貫の公立学校なので、12年間通うことになる。小学部に入った瞬間から、 高校受験もなくエスカレートに進むエリート校である。
学校の行事があると、多くの周辺高校の学生がボランティアとして参加してくれる。若い人でも心温かい人が一杯いることを初めて知る。 自分の子が障害を持っていなかったら、私は確実に汚い人間になっていることであろう。この子が、私の考え方を変えた。この子が、 多くの人との出会いをさせてくれたのである。
学校生活12年間のうち、半分が終わった。
1年生の時から水泳教室にも入った。普通の子が1ヶ月でできるボビング、バタ足の最初の10級をクリアーするのに6年間掛かった。 水泳帽子の色が青から赤に変わったときは、家族でお祝いをした。
あっという間の6年間だった。
6年後、人生最大の悲しいときが待っている。養護学校を卒業する時だ。
昨年は、PTA役員として、卒業式に参列したが、初めから最後まで全員が涙、涙だ。壇上に上がることができない子が、 何とか卒業証書を受け取ると、会場からは拍手が起きる。人数が少ないから、入学当時からのビデオまで流れる。この感動は、 今まで味わったことがない心を揺さぶるものがある。
次の日から、親は、当方にくれる。養護学校を出て、企業に就職できる人は、最も優秀な高等部から入学してきた人で、3人程度。 東大に入学するようなエリート。半分は授産施設や作業所と言われる訓練所に行く。基本は、自立通所ができる人。 小学部から12年間通った子のその後の進路は極めて厳しい。
在宅となれば、親が死んだ後、この子はどうなるのだろうと将来を悲観する。学校に通った12年間より、それ以降の年月は遥かに長い。 しかも、親の体力は衰え始め、退職も身近に感じるころになる。
あと6年間。私は、彼のお陰で精神力は極めて強くなった。
悪いものは許せないし、妥協もしたくない。必死で生きてきたので、チャランポランで曖昧で、 ダラダラと何となく生きることなどできない。
激昂して生きている。
6年後、私は、心が温まる仕事をして見たい。そのためなら、どんなものにも挑戦するし、死をも覚悟して突っ走るつもりだ。
我々は、自由に考え、自由に話すことができるのだから。
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投稿者 :堀田信弘: 2006年3月11日 11:52