IT業界は、もの凄い勢いで、海外生産(オフシュア)開発が進んでいる。中国、韓国、インド、フィリピン、そしてベトナムと、より人件費が安い所に開発の拠点が移っている。
実際の貿易上の数字を見ても、大手メーカ、SIベンダーを中心に増大しているのは間違いない。
これに引きずられるようにして、中小零細企業のソフトハウスも挙って大陸に進出した。
ところが、これが上手く行っていない。
実際にオフシュア開発を行った社長に聞いて見ると、概ね8割の会社が痛い目にあっている。場合によっては、「もう撤退だ」というところもあったり、進出しようと考えていても二の足を踏んだりしている話を良く聞く。
しかしながら、日本は少子化社会に向かっていることも事実であり、かつプログラミングという中間フェーズを、これからも日本人の単価でやっていけるのかという現実的な問題があるのも事実である。
当然、その結果、日本が生き残る方向性は、二つのアプローチしかないと言えよう。
ひとつは、アメリカのように特許技術など頂点として、上流工程へのシフトである。欧米がオフシェアに成功している最大の理由は、要件定義や基本設計といった上流工程がしっかりしていることであり、仕様が固まっているためにブレナイことである。
それに対し、日本のやり方は、フィックスをする力が弱いのか、あるいは客の要求がコロコロ変わるのかは別にして、世界的に見ても中々上流工程が固まらない曖昧な文化であることは間違いない。
ひとつの考え方として、それは日本語の文化にも依存しているように思う。結論が先にこないで、
語尾がハッキリしない社会で日々生きているから、最後の最後まで抜け道があるような表現が多く、イエス、ノーと言った単純に割り切れない性格が起因しているような気がする。
その文化は、気遣いという良い面もあるが、一方で世界的に見れば判りにくいのも間違いない。
文化の違いはさておき、何れにしても日本企業のオフシュア開発が上手く行かない理由は、私が知る限り日本人のSEとしての能力の低さにあるのは間違いない。折衝能力が低いから上流工程の甘い。上流工程がしっかりしていなければ、どんな優秀な国に発注しても、上手く行きはずもない。
国内の下請けに発注したときだけ、下請けを泣かせてなんとかやってきた。
こんなことは言われて久しいが、この事象を改善するにはどうしたら良いかという別のアプローチの始まっている。
これまでは、上流工程に多大な費用をかけ、できるだけ正確な仕様を固めようという考えが一般的であった。そうすれば、多少品質の悪い国の技術者であっても、なんとかこなしてくれるはずだと考えたのである。
現に、私が実際に行って、見聞きした感じでは、中国も韓国もベトナムも決して日本人より技術力が劣っている訳ではない。現に、アメリカのマイクロソフトは、企画段階の上流工程をアメリカで行った後は、コーディングなどのプログラミングフェーズは、インドに大量に発注している。
インド人は、英語圏であり、オープン系の開発が盛んなことから、現時点において既に日本人の技術力を上回っていると言って過言でない。
しかし、これが、日本人が行うと上手く行かないのである。
その最大の理由は、日本人は、相手には改善を求めるが、日本人側が改善をしようとしていないからではないだろうか。
日本人だって、他人が設計した後のプログラミングだけをやらせられるのは嫌だと感じるのと同様に、今、国内の経済が順調な中国人が「プログラミングフェースだけをやっていれば良い」という発想で頼まれても、良いものができるはずがない。
そこで、今後注目されるのが上流工程ではなく下流工程ではないだろうか。
これまでの開発は、上流工程に金をかけて、それから先の下流工程はできるだけ安くしようとする考えが一般的であった。
しかし、メーカが出荷した例えば携帯電話にバグがあったとしたら、その解消と顧客への告知だけでも桁外れの損害が発生することに気がつき始めた。これは、例え上流会社の瑕疵担保責任があるとしても、実際に迷惑を被るのは、携帯電話機メーカのエンドユーザであり、損害を受けるのはそのメーカなのである。
そのため、メーカは、最終工程であるテストフェーズを最も重視するようになってきた。これは例え、上流がだめでも下流がしっかりしていれば、問題を最小限に抑えられるという発想である。
性善説にたって、いつかは正しくできるはずと育つのを待っているだけでは、決しては問題解決にはならないのである。性悪説にたって、問題は起きて当たり前という観点に立っていれば、それを防ぐほうのが容易なのかも知れない。
検証作業や負荷テストと言った下流工程の技術がまだまだ始まったばかりである。
私の考えでは、中流のプログラミングはどこの国でもできるが、差別化するとすれば上流と末端の下流しかないと思っている。
日本人のためのシステムは、上流と下流だけは、日本人がやったほうが良いし、運用なども下流に含めれば、日本人技術者が最後に生き残れるのはそこしかない。
ドリクラグループに新たにできたソニックブラスター社は、この難問に取り組もうとしている。
ソニックブラスターは、誰も嫌がる下流事業を積極的に取り組み、それを通じて、多くの就職難民を受け入れられるような会社に育ってもらえればと願っている。
どの時代でも、積極的な雇用に取り組んだ会社は、間違いなく伸びるに違いない。それは、雇用は大きな社会貢献につながるからである。
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投稿者 :堀田信弘: 2006年5月30日 07:58