【堀田信弘の今日の語録】 『この会社は、きっと伸びるだろうな。他の会社と違うことができること自体に可能性を秘めているから。』


経営者について  「活・喝・勝」


買う力

経営者はお金を使うことが仕事である。上手に金を使えるかが経営者の力量、センスを表す。経営をしていて、お金を使わないということは絶対にあり得ない。必ず支払わなければならないものがある。つまり、常に経営とは何かを買っていると言っても過言ではない。

払うものはできるだけ少なくしようと考えるのも当然だ。無駄なお金を使っていてはどんなにお金があっても、直ぐに底をついでしまう。

だからと言って、セコイお金の使い方は、決して良い結果を生まない。

そんなことは誰でも判っているのだが、実態は、あれも必要、これも必要なものばかりで、少しづつ分散してお金を使わなければならない気持ちになる。お金が潤沢にあったなら、きっともっとメリハリの利いたお金の使い方ができるのにと考える。

しかし、このように考えていては、いつまでも潤沢なお金が集まるはずもなく、また、仮にお金が今よりも10倍あったとしても、足りないという気持ちは払拭できない。

そもそも、経営者はなぜ、お金を使うのか。

買うことが仕事ではなく、売ることが仕事であるはず。それも、お金を集めたいために経営をしているのに、入ってくることよりも出すことのほうが重要だというのはなぜだろうか。

それは、経営とは投資の連続だからである。

まず会社が誕生した瞬間から、投資が始まる。事務所を構えるためにはお金を払わなくてはならない。人を雇うにも給与を払うし、その前に採用広告だって必要だ。電話も入れなければ仕事にならない。名刺の作成も必要だろう。

パソコンがなければパンフレットも作れないかも知れない。

これもそれも、お金を稼ぐために最低必要なことなのである。どれもやらなくてはならないことばかりだ。できれば、最低限で済ませたいとも考えるだろう。名刺も自分で必要な分をプリンタで作成したり、事務所だって自宅と共有できることだってある。

そう、無駄と考えるものには極力金を使わないのは当然なことである。

だとしたら、必要なものには思い切ってお金を使える勇気があるだろうか。

例えば、デザイン会社であれば、パソコンはデザイナーの商売道具であり、言わば命だ。もし、これをケチれば、もう既に商売が順調になっている同業他社と競り合うことは難しい。どんなに腕の良い職人でも、ある程度の道具が揃っていなければ、パフォーマンスも発揮できず、仮にできたとしても生産性は極めて悪い。

数ヶ月前、インキュベーションオフィスのレイアウトをデザインさせた。二つの建築デザイン会社に同時に話をした。

最初に提案を持ってきた会社のほうは、三次元で事務所の出来上がりをイメージ画として添付してきた。私は、そのイメージを元に、訂正をお願いし、再度提案をもらうことにした。

一方、小さな会社でまだ設立されて間もない会社のほうは、もう一方の会社に比べ、2週間ほど遅かった。その2週間の間に、最初の会社は、私の指示した訂正事項を取り入れ、最終形に近い形で、しかも見積書をあわせて持って来ていたのである。そのことを言うと、後の会社は、「その会社の見積金額よりもとにかく安くやるから」と言ってきた。

もう、この会社はタダ安いというだけでしか受注できる見込みが無くなった。

デザイン会社でありながらデザインの実力を全く示すことができなかったのである。いち早くお客に提案し、かつイメージがわかり易くするためのグラフッィクデザイン、そして、それを元に速やかに金額を弾き出す見積力、その総合力でデザイン会社は勝負しているはずだ。

それなのに、負けた会社は設備面で十分でなかった。仮に才能の優れたデザイナーがいたとしても、その能力が活かされる生産性とスピード感が欠けていた。逆に考えると、そのような会社に飛びぬけた才能のあるデザイナーがいるとは思えない。

そもそも、デザイン会社にとっては、設備よりもデザイナーという人材のほうが重要なはずであるが、そのような設備も整っていない会社に人材が集まるはずもなく、現にこのように商談で負けているようであれば、決して十分な採用活動と求人販促活動が行えているとは考え難い。

経営者は、事業において必要なものに、他社に負けない位の投資を行う意欲があるかが問われるのである。

人も金もモノもない中小企業にとって、大手に張り合うには、思い切った集中投資が必要である。

ドリームクラスターは、ローコストオペレーションを掲げているが、それはケチになることを言っているのではない。一円でも多く削って、一円でも多く必要なものに投資しようという考えからである。

例えば、グループ会社のフリーランスターは、昨年設立したばかりであるが、毎月70万円近い宣伝広告費を使っている。

売り上げがゼロのときからずっと続け、これからは売上の20%近くを投資する勢いでいる。そのため、たった一年で稼動している技術者は30名近くになった。この調子で行けば、期末には倍の60名を超えるだろう。

会社というのは、不思議なもので、お金を使わなければ、リターンがない。上手くお金が使えたとき、その成果は大きい。

お金を使ったにも関わらず、成果がでなかった時は、投資金額が中途半端なのではなく、投資する意欲が欠けていたのである。もし、本気でこの事業に投資しようと熱い思いと信念があれば、なけなしのお金でも最大限の投資を行うだろう。

そのような思い切った投資をする時には、妥協せず良い方法を考え、最も効果的な手段をあらゆる方法を使って選び抜くだろう。

そのようにして、少ないお金であっても、今の自分の会社でやれる最大限の方法に投資を行えば、きっと成果も高いはずである。

勿論、投資である以上、失敗は付き物だ。しかし、それは、選んだ方法に問題があったのではなく、選ぶ側の投資判断に誤りがあったと自覚すべきだろう。それは、投資すべき事項がそもそも違っていたのか、あるいは意気込みが欠けていたか、運が悪かったのである。

しかし、どのような理由があれ、それが買う力である。

買う力がある人は、運さえも見方につけ、最小限のお金で最大限の成果を出す効果的なお金を使っている。効果がでれば、また別の買うものが生まれ、経営は好循環になる。

採用広告に何百万円もの投資をするところもあれば、その投資金額を社員に還元することで、
どこよりも一円でも高い初任給を実現しようとする会社もある。

また別の会社は、富士山の山頂で面接を行うとマスコミに発表し、山頂まで来たものは全員採用すると公言し、多くの社員を集める会社もある。何れの方法も、お金は掛かっている。

全ては経営者の買う力が、他社との差別化を生むのである。買う力が乏しければ、売る側の言いなりとなり、投資した分の回収はできなくなるだろう。売るためには、何にお金を使うべきか考える買う力がなければ、もはや経営者とは呼べない。

最後まで読んで頂き、感謝申し上げます。

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投稿者 :堀田信弘: 2006年6月18日 22:28