通常、人は、モノを購入する時、商品同士の金額や内容を比較したりして、少しでも良いモノを選ぼうとする。同じ商品でも、色々なお店で買えるから、お客が購買意欲を持って来店しても、店員の態度や店の雰囲気で他の店に行ってしまうこともある。
お客の心は、浮気心で一杯だ。隙を与えれば、一瞬で逃げられてしまう。普段は売る側の営業の人でも、自分が買う側になって考えれば、店を選んで、相手を選んで、商品を選んでと、選択、選択の繰り返しの末にモノを購入していることに気づくはず。
お客の心は、壊れやすい心であることを肝に銘じていなければ営業失格である。
一方で、営業の仕事とは、お客が買うことに対し、迷いや戸惑い、心配ごとなどを払拭させてあげる役目がある。そっと後ろから手を添えて、軽く背中を"押し"てあげることで、買うという決断をするお手伝いをする訳だ。
全く同じ商品を持たせても、売れる営業マンとそうでないものが現れるのは、この"押し"の差が大きい。
上手いタイミングと、程よい強さの"押し"が求められる。タイミングが下手であれば、押し売りになる。相手が要らないと決めてしまっているの状態で、どんどん"押し"ても全く意味がない。あくまでも"押し"とは、そっと後ろから手を添えて、軽く背中を"押し"てあげることである。
最近、これが下手な二人の営業マンと出会った。
ひとりは、"押し"ができない人。このタイプは、営業を辞めたほうが良い。明らかに向いていない。ところが、"押し" ができないからと言って、全く売れないかと言うとそうでないから厄介である。そのため"押し"ができない人は、自分が売る能力がないことに気づかない。押さなくても商品が良ければ、稀に売れてしまうからである。
しかも、このタイプは、"押し"ができないだけでなく、客に"押される"特徴があるから、それが理由で間違って売れてしまうことがある。
例えば、購買意欲満々のお客には、どんな人が接しても黙っていても売れる。極端に言えば、接客しなくてもいい訳だ。こんなお客に" 押し"のできない人が当たると、お客にグイグイ"押されて"、値引き交渉、条件交渉にやられっぱなしになる。お客のほうが上手と言うことになる。売れても全く利益がでないばかりか、厄介な案件を持つ込んでしまうことになる。
もし、"押し"ができない人が経営者になったら、どういう結果になるだろうか。お客だけでなく、部下にも、仕入れ先にも押されっぱなしになり、全く交渉できないことになる。交渉下手が会社の舵取りをするのだから、もはや経営者不在の状態になるだろう。
さすがに、このような営業マンや交渉下手な経営者というのは割合的には少ない。そもそもそのような人が営業職を選んでいることが少ないからである。だから、ここでは"押し"の弱い人タイプは論外ということになる。
そう、普通は"押し"の強いタイプが営業であることが多い。
この中に、"押し"の下手なタイプが極めて多いのだ。簡単に言えば、"押す"ことしか頭になく、"押せ"ば相手が"引く" ことを理解していない。本来、"押し"は、営業が持つべき重要な武器であるが、武器である以上、誤った使い方をすれば、一発で相手を殺してしまうことになる。客が逃げる訳だ。
営業が行うべき"押し"は、そっと後ろから手を添えて、軽く背中を"押し"てあげることである。これがタイミング良くスマートにできるかどうかだ。
ところが先日出会った営業マンは、どんどん自分の主張し、こちらの考えを示すと"反発"して"押し"巻くってくる。完全にこちらの気持ちは失せており、引いていることに相手は気づいていない。仕舞いには顔が強張って怒りの気持ちまで湧き上がっているのに、営業マンは「なぜ判ってくれないのか」と必死で"押し"てくる。
「もう止めてくれ」っと言った感じだ。
こういうタイプの営業成績は、納得できないが、不思議なことにそれほど悪くない。押し売りが通用してしまうから、余計に図に上る。だから自信過剰になり、必ず売れるはずという気持ちで、「なぜ判ってくれないのか」と"押し"てくる。こんなに説明しても判ってくれないには、自分が悪いのではなく、お客の理解力がないからだと、お客を上から見下ろそうとする。
相手の心が読めないこのタイプ。私は、大嫌いだ。
頭が悪いというよりは、育ちが悪い。自分の姿を知ることができないのだから、相手の心など読めるはずもない。相手の心が読めないようであれば、例え営業としてはまずまずの数字を上げたとしても、リーダーとしては不適格。部下の面倒を見ることもできず、育たない部下を攻め立てるだろう。恐ろしくて組織など任せられない。
先日会ったこのタイプは、20代と50代だった。そういう意味で、このタイプは、人から注意されても直らないのかも知れない。
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投稿者 :堀田信弘: 2006年7月 7日 16:36