先週は、プレゼンや懇親会が何度かあったせいか、一週間に120人もの人と名刺交換をした。そのうちの何十人かとは夜遅くまで酒を交わし、楽しい時間を過ごした。経営者は、経営者と酒を交わすと、実に勉強になることが多い。
私は、仕事をもらうための接待行為は基本的に好きでないが、仕事の成約を前提としない情報交換というのは実に大切だと思う。経営者が経営者同士で酒を飲むと、社員には言えない悩みがポロリと出る。こちらも出せば、あちらも出す。こちらが「うちはこんな取り組みをしている」と言えば、相手はとても関心し、「それならうちでもやってみようか」となる。そうして話していると、自分の会社の経営に役立つヒントも得られ、そして何よりも友人のようなパートナーシップが築ける。
このような関係は、仕事上の取引を前提とした接待では中々生まれない。だから接待は好きじゃないのである。
これに気づいたのは、東京で仕事をするようになってからだ。地方では車通勤のため、酒を飲む割合も少ないし、懇親会のようなイベントもそれほど多くなく、あっても同業他社の集まりで、中々腹を割って話すような機会は少なかった。
ここのところ、月に数回はこのような会に呼ばれ、なるべく多く参加するように努めている。
理由は、勉強になることが多いからだ。
しかし、実際には多くの参加者のうち、まじめな経営の話をして盛り上がるような相性の方は、一割いるだろか。普通は、ゴルフの話、遊びの話になることが多く、酒を交わしながら真剣に仕事の話ができる人は少ない。
「酒を飲むときくらい仕事の話は抜きで」という人もいるが、私はそうは思わない。地域の人と草取りの後に酒を飲むならまだしも、懇親会という何かを期待して、何かを得たいと思って集った仕事を通じて知り合った人と、仕事の話ができないのであれば、そんな人と話をしても価値がない。私は、だからと硬い話をしろと言っているのではなく、酒を楽しく飲みながら、お互いに打ち解けながら、それぞれにとって有意義な時間が過ごせることは良いことだと思う。
これは社員に求めても出来ないことであるし、経営者じゃなければ出来ないことである。経営者が経営者と会い、こういうことを繰り返さなければ、金の切れ目が縁の切れ目の表面上の取引関係にしか過ぎず、人脈にはなりえないのである。
人脈と言うと、有名な人とのつながりや、偉い人、とても会いそうにない人との関わりと思い浮かぶが、私は、人脈とはそういうものではないと思う。人脈とは、腹を割って話せる人のことで、ただ一度一流会社の社長と名刺交換したからと言って、人脈などとは言えるものではない。
会社は、人に助けられて生きている。勿論、社員にも助けられるし、取引先にも助けられる。しかし、私の経験では、実際に仕事上の取引がない人から助けられるほうが、遥かに助けられる大きさや深さは違うように感じる。極端に言えば、お金の貸し借りができるような間柄というのは、実に信頼関係がなければできないものである。
お金だけに話を絞るといささか嫌らしいが、助けてもらうと言うことは、困っているときに損得なしに何とかしてくれることであり、それが経営である以上、間接的であっても助けられたというのは、金銭的なダメージを回避できたということになる。
私が言いたいのは、お金の貸し借りができる人を持ちなさいというつもりは毛頭ないので、誤解されたくないからお金の話はここら辺にして、それ位、何でも相談できる経営者仲間を持つべきだということにしておこう。
そのような経営者仲間は、冒頭で言ったように、付き合って、お互いに勉強になる人であることが重要である。経営的に参考になるような話が聞けたり、こちらも惜しみなしに取り組み状況を話しできたりと、ギブアンドギブの関係が重要だ。ライバル会社であっても、人間的にギブアンドギブの付き合いが出来ていれば、同じような畑を耕しているのだから、畑で問題があった時に的確なアドバイスをしてくれるものである。
私の仕事は、IT業界がお客さまだから、幸いにして何百人ものIT会社の社長と会っている。だから、初めて会うIT会社の社長には、こちらの持っている情報や考え方はどんどん提供し、少しでしゃばりなつもりでも何かの参考になればと、他社の事例を多く話すようにしている。
ギブアンドギブの気持ちがあれば、こちらから何かを要求したり、求めなくても、自然に相手から求めてくるようになり、場合によっては与えられるようになるものである。
人間関係というには、男と女でも同じだが、求めるよりも、与えるほうが遥かに上手く行く。求めたり、与えられることを期待するから、ガッカリしたり、悔しい思いをするものである。貸した金は返ってこない覚悟で、期待せずに与えることだけを考えていれば、問題も少なく、結果として、求められるようになったり、与えられたりするのではないだろうか。
そもそも、こちらがギブアンドギブの気持ちで接してもいても、かつ、こちらがまじめに腹を割って話そうとしても、一割程度の人しか、相性が合わないのだから、鼻から相手に何かを期待して付き合おうと言うこと自体が、ナンセンスなのである。
だから、貴重な存在だし、見つけることが大変なのだから、それが人脈なのである。
しかしだからと言って、こちらがギブアンドギブの気持ちがなければ、貴重な一割の人に出会うこともなく、相手からいい加減な一人の一員に思われるだけである。
人脈は一日にしてあらず。出来るだけ積極的に多くの人と出会うことが、たった一人の信頼できる経営仲間を見つけることになる。
経営にとってこんな重要な仕事は、経営者でないと出来ないのである。人脈は財産なのだから。
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投稿者 :堀田信弘: 2006年7月22日 17:12