大きなことをしようとしている。同時に数社設立するような案件だ。興奮と不安な気持ちが交互に渦巻いている。眠れない日もある。
小学生の頃、運動会の前の日は、眠れなかった。明日のことを考えると、楽しみと不安な気持ちが交差し、興奮して眠れなかった。運動会の練習では、一位になったが、予行練習ではつまずいて二位になった。明日の本番では、つまずくのか、無事走れるのか、こんなことを考えてしまう。
こんな性格だから、私は元来マイナス思考なのかも知れない。
悪いこと、失敗することが常に頭を過ぎる。やるぞと強い決心をするまで、私は、完全にマイナス思考の塊になる。
考えれば考えるほど眠れない。一旦、眠れないと思ってしまうと、失敗するケースばかりが頭の中を支配する。
人というのは、弱いものだ。昼間と違って、寝るときは一人ぼっちになる。隣に子供や妻が寝ていても、相談することなどできず、事実上たった一人の夜を過ごす。会社を経営するようになってから、このように眠れない夜は何日もあった。
先行きを心配した時、新しい会社を設立する時、資本・業務提携をした時など、大きな決断をするような時は、必ずと言っていいほど私はマイナス思考になる。
しかし、私は、ひとりぼっちの夜以外には絶対にマイナス思考にならないと硬く決めている。悩みもがき、辛い思いは誰にも見せたくない。リーダーとはそうあるべきだと思うからだ。
だから、昼間の私は、マイナス思考を隠し、プラス思考を飾っているだけなのかも知れない。あるいは、普段はプラス思考に見えていても、実は大変弱気になってしまう一面があるのかも知れない。これは、私に限らず誰しも弱いものを持っているものだし、だからと言ってリーダーとして不適格というものでもあるまい。
ようは、リーダーたるものは、みんなの前ではプラス思考でなければならないのだ。誰もが悩んでいる時でも、打開策が見つからない時でも、なんとかするという強い意志を持って、組織を率いらなければならないのだ。どんなことがあってもリーダーはリーダーとして、ポジティブな姿勢を演じきらなければならないのである。一時を演じるのではなく、終わりのない一生演じきる必要があるのだ。
私は、眠れなくなった夜、トコトン付き合うようにしている。すると、悪いことは全て考え尽くせる。打開策の見つからないことをいつまでも考えていても、行き詰る。それよりも、他のリスク要因を考え出す。そうすると、リスクの全容が見えてくる。マイナス思考状態であっても、こうして利用すれば決して無駄なものではない。
こうなればこっちのものだ。遂さっきまでマイナス思考の固まりになっていた頭の中が、次第にプラス思考に向かう。眠れない夜と、今日は朝まで付き合うという気持ちになった時、もうその時点で頭の中のベクトルが変わるのである。
気持ちの持ちようというのは、不思議なものだ。
マイナスの気持ちと戦うのではなく、マイナスの気持ちと付き合う気持ちも重要なのかも知れない。それも自分の在りのままの姿なのだから。自分の弱い面を受け入れ、そして如何にいち早く気持ちを切り替えられるか、そちらのほうが遥かに重要なのである。リーダーである以上、起こりえるあらゆるリスクを想定するのも仕事だ。だからリスクばかり考えていれば、誰しも滅入ってしまうものなのである。
つまり、リスクを考えている状態は、マイナス思考になりがちだが、それはリーダーとして当然経験しなければならないことなのである。全身全霊プラス思考の塊であったなら、むしろ、リスクを軽視することになるので、リーダーとして責任ある立場を意識していれば、当然の成り行きと受け止めることが重要なのである。
そして、気持ちの切り替えを最も要求されるのがリーダーだ。
昼間リーダーとして振舞おうとしても、夜眠れないで体調が悪ければ、どうしても弱気な考えになってしまう。眠れないと、次の日のことを考えて、眠ろう眠ろうとあせり、余計に眠れなくなる。
そんな時は、そこで気持ちを切り替える。眠れないなら、朝まで徹夜をして仕事をしてしまうのだ。明日やるべきことを、眠れない日を活用してやっつけてしまうのだ。そうすれば、明日は少し早めに帰れるだろう。徹夜をすれば、その夜は、グッスリ眠れ、マイナスの呪縛から開放される。
マイナスの呪縛から開放するのも非常に大切だと思う。リスクを考えることは重要だが、何日も何日もそのような状態を続けて、問題点を洗い出しても精神的に良くない。もし、それほど問題点が山積みなら、あえてどれかひとつを失ってしまったほうが早い。
全てを失わないように慎重になり過ぎていたら、いつまでたってもマイナスの呪縛から抜けられず、どんなことをやって上手く行かなくなる。マイナス思考は、プラス思考をもたらすためにあるのであって、そのような後ろ向きな気持ちが続くことは、もはや経営者であるならば失格である。だから、いち早くマイナス思考状態から抜け出す工夫を身につけるのだ。
例えば、私は最近、毎朝早く起きてジョギングをするようにしている。それ以来、夜は黙っていても眠くなるのが早くなった。眠れない日というのは、ある意味で、体が眠りを要求していない状態なのかも知れない。毎日6、7時間寝ることが重要ではなく、眠くなったら眠れば良いのだ。
こうすれば、リスク要因は夜洗い出せる。リスクを知って、それを覚悟の上で、昼間、組織を指揮する。「こんなリスクがあるが、やるぞ」と周囲の不安を払拭するのが、リーダーの役目だ。
こんな私でもやれるのだから、誰にでもできる。気持ちの持ちようで、リーダーは、プラス思考で、ポジティブに行動できるのだ。
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投稿者 :堀田信弘: 2006年8月 7日 08:59