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求めるよりも求められること

クメール人の町に行ってきた。東南アジアでは、最も早く文明化して国家を建設した民族だ。東南アジア最大の湖であるトンレサップ湖を南に抱くシェムリアップというその町は、日本からの直行便はない。ベトナムかタイ経由でその国に入る。シェムリアップ国際空港は、2005年に出来た真新しい空港だ。

空港は、一階建ての小さな駅のような建物。飛行機から歩いて、ターミナルに向かう。初めにビザの申請。そして、入国審査を受ける。

最初に驚くのは、ココだ。入国審査をスムーズにするためにチップを要求される。チップさえ渡せば、フリーパスに近い。こんな国があって良いのだろうかと驚かされる。

この国は、アンコールワットで有名なカンボジアである。ポル・ポト派による内戦が終結し、国連に加盟したのはたった7年前の1999年だ。内戦では、人口の3分の1にも及ぶ200万人が殺害された。大量の地雷は、今でも残っている。

シェムリアップは、アンコールワットの玄関口で、首都プノンペンより急速な発展を遂げている。経済成長率は7%近くにもなるそうだ。町には、一流ホテルが建てられ、スーパーマーケットも出来た。それでも信号機のある交差点は一箇所。ネットカフェは見当たらない。

クメール人は、とにかく明るい。いつも笑顔でいるように見える。人柄のせいか治安は極めて良い。大乗仏教の影響からか、スリや引ったくり、泥棒などはほとんどいないと言う。

メコン川、トンレサップ湖と自然に恵まれ、クメール文明を築いたのに、なぜ崩壊してしまったのだ。

ベトナムの介入により国は、内戦に突入し、今では最も遅れた国のひとつになった。小学校に通えない子も多いから、子供たちの半分以上は、クメール語が読めない。

遺跡周辺に行くと、子供たちが、大勢集ってくる。人差し指を一本立て、「何かひとつちょうだい」と言っているようだ。彼らの家は、一家で一ヶ月30ドルほどの生活。子供の一人が観光客からたった1ドルもらえればその日の生活が成り立つという訳だ。

私についた日本語のできるガイドは、月給100ドルのエリート。難民キャンプで見よう見真似で日本語を覚えたそうだ。

町のあちこちに地雷で足や手を失った人を多く見かける。内戦で戦死した男性が多いため、男性1に対し女性が3の割合。生き延びた男性は、貴重な働き頭である。

好きな国はどこと聞く。

いの一番に日本という答えが返ってくる。1990年、カンボジア和平会議を東京で開き、内戦は終結した。その後、国連主導でUNTAC(国連カンボジア暫定統治機構)の事務総長には日本人の明石康がつき、翌年総選挙が行われて新憲法が公布された。日本人による平和貢献は地元の人に知られている。

それよりも、日本人の人柄の良さが好きなようだ。"やさしい、親切にしてくれる、バカにしない、大声で怒らない"などがアジアの他の国と明確に違うようだ。

日本人を好きな国があるのだ。日本人は野蛮人だ、再び戦争を起こすのかと思う国もあるのに。

私たち日本人は、"やさしい、親切にしてくれる、バカにしない、大声で怒らない"人間と彼らには写っている。考えさせられた。私には、クメール人のほうが"やさしい、親切にしてくれる、バカにしない、大声で怒らない"民族に写るからだ。

かつて日本人が犯した数々の不幸な侵略は残念ながら事実だ。60年以上も経っても謝罪を求める国があることも仕方ない。しかし、その国は、つい十数年前までカンボジアをメチャクチャにしても、謝罪などしようとしないとクメール人は言う。60年前のことより、今が大切、未来志向が重要だと訴える。

過去のことは勿論反省するが、今を何するか、将来何をできるかを考えなければ永遠に友好関係は生まれない。ついこの間まで戦争状態にあった国の人に、戦争を経験していない世代の私が教わる。親から戦争中は大変だったと聞かされたのとは違う感覚を覚える。

学ぶことが多くあった。

求めることよりも、求められることを知った。上司の関係、男女の関係、夫婦でも最も大切なことのような気がする。求められたければ、求めてはいけないとも言える。ないものや、できないこと、失敗したこと、過ち、犯したことを問い続け、マイナスをゼロにすることよりも、何をを与え、奉仕し、求めず、要求せず、期待しないほうが、遥かにプラスの関係が築けるのかも知れない。

求めるよりも求められること、やれそうで中々できない。そしてまた、求められることを期待するより、与えることを優先しなければならないのである。求めるよりも求められること、それはギブアンドギブの精神だ。

今回の旅で得た、この気持ちを忘れないようにしたい。

最後まで読んで頂き、感謝申し上げます。

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投稿者 :堀田信弘: 2006年8月18日 22:40