【堀田信弘の今日の語録】 2010年7月31日 『衰退の陰は、発展と共に常に忍び寄っている。』


組織について  「活・喝・勝」


親しさを切る

組織を強くする、これはリーダーの大きな仕事のひとつだ。組織が、単なる人の数を足しただけの成果しか上げられないのであれば、それは組織ではなく、ただ単に個人の集りにしか過ぎない。つまり、リーダー不在ということである。

先日、インターネット求人最大手でヘラクレスに上場しているエン・ジャパンの越智社長と食事をした。

越智社長は、熱い人だ。採用説明会では、会社の良いことだけでなく、求める人材について、厳しいことも強く言うそうである。決して甘い会社ではなく、どこよりも辛い可能性があることを伝えると言う。

入社した社員に対しても、「君は中学校で何の部活をしていたか」と尋ねる。「サッカー部です」と答えると、社長は「どれ位練習していた?」と聞き返す。すると「放課後も練習し、土曜日は朝練、日曜日は練習試合に行きました」と社員が答える。越智社長は、「そうすると、毎日練習していたのではないか。夢に向かっている時は凄いな。一銭にもならないことなのに頑張れるんじゃないか。それなのに、なぜ会社に入ると、土曜日や日曜日に休むのだ。体の疲れを取るためには、休むなというつもりはない。プロとしての意識があれば、そして仕事にやり甲斐を感じていれば、徹夜だって苦痛じゃないだろう。しかも、給料までもらえるんだ。言われてやるのではなく、自ら進んでやっていたら、もっと仕事ができるはずだ」

とても印象的な話であった。

なるほど、私も中学生のころは、夢中で部活に励んでいたような気がする。あれくらい打ち込めるものが、仕事であったなら、すごい成果が出せるだろう。どこかで、サラリーマンは、プロの意識が掛けている。

リーダーがするのは、やる気を出させ、組織に個人の和以上の成果を出させることだ。10人いれば、どうしたら15人分の仕事ができるかを考えなくてならない。どうやったら20人のチームに勝てるかを考えなくてはならない。

私は、以前、アットホーム的な組織を強い組織にしようとして苦労したことがある。

誰が社長になっても、社員は家族のように大切にしたいと考える。できればもめ事も起きないようにしたい。家族ぐるみの付き合いだってしたい。社長が社員を大切に思う気持ちがなければならないのは当然のことである。

社員のことを考えれば、会社の究極の役目は、会社を発展させて、社員の待遇を少しでも良くすることである。と言うことは、発展させなければ、社員を冷遇することになる。そのためには、淘汰されないようにすることが経営者の役目である。そう、強い組織を作らなければ、より強い組織に潰される。弱い組織のほうが良いということはあり得ない。

社長であれば、誰もが強い組織を望むはずである。しかし、その手法を誤れば、思った方向にならないことがある。日本的な考えの「和を重んじる」手法は、国際的な競争社会に入り、必ずしもベストな手法であると言えない。もちろん、「和」という考え方を全く否定するものではないが、「和」を重んじすぎると、調和を優先し、議論をさけ、見せ掛けの仲良しクラブになる可能性がある。

上下関係が希薄になり、指揮命令が曖昧、責任の所在が不明に陥る。

アットホームな関係は、親切な気持ちをもたらす。隣で忙しそうにしていれば、手伝ってあげるやさしい上司。部下は親切な上司に感謝する。すると、さっさと仕事を終わらせる有能な部下には、忙しそうにしている他の部下の仕事を上司が持ってくる。この一見親切に見える上司は、本当に親切でやさしい上司なのだろうか。

あるいは、この上司は有能な上司であろうか。

さっさと仕事を終える有能な部下は、会社を去るだろう。上司は、人を育てられるだろうか。そして、この組織は強くなるのだろうか。

答えはノーだ。

上司は、上司として仕事があるはずである。上司だから給料も高いし、やるべきことも違うはず。それが、できない部下の手助けをし、部下がやっている仕事をして同じ給料をもらって良いのか。有能な部下には、どんどん仕事を押し付け、できない部下を助ける。上司が上司の仕事をしていない。

社長なら誰でも、社員が好きなはずであり、大切にするはずである。そうでないのは論外だが、大乗的な気持ちよ小乗的な気持ちでは全く異なる。

大乗的な気持ちとは、父親的な感覚と言えよう。それに対し小乗的とは母親だ。一言で言えば、大乗的は、"可愛い子に旅をさせよ" という大局的にたった成長を願う気持ちである。小乗的は、小さな局所的な観点を大切にするものであり、子供を守り心配する気持ちであろう。

私の結論は、リーダーは大乗的精神がなければいけないと思っている。組織で言えば、親しさを切ることができる関係だ。徹底的に議論ができ、お互いに牽制しあい、かつお互いを認める。これが親切というものである。ほんとうにやさしい上司であれば、手伝ってはいけない。なぜならその部下の成長を阻害することになるからである。部下が遅れて自分が困ると考える冷たい上司だから部下の仕事を手助けするのである。

親切は、親を切るとも書く。母親のような小乗的な気持ちを切り捨てる勇気が大切なのだと思う。簡単に言えば親離れである。独立心を養い、親は子離れして、子供が飛躍することに手を貸すのである。できないことに手を貸しても、何ら成長のためにならない。

親しさを切れる組織は、強い。それでいて、殺伐とした風通しの悪い組織であってはいけない。その両立こそが、リーダーの仕事だと思う。

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投稿者 :堀田信弘: 2006年8月29日 07:43