【堀田信弘の今日の語録】 『この会社は、きっと伸びるだろうな。他の会社と違うことができること自体に可能性を秘めているから。』


組織について  「活・喝・勝」


命令の出来なくなった組織

先日お会いした韓国人社長は、「本当に日本語というのは曖昧で"難しい"」と言っていた。"難しい"というのは、日本語そのものだけでなく、日本人の考え方や今の風潮に対する理解し難い"難しさ"を意味する。

日本語の曖昧さは日本人であっても理解していないことが多い。

例えば、「何々して下さい」という表現。

これは、相手に対する"命令"だろうか"依頼"だろうか。

もし主治医から「健康のために少し運動して"下さい"」と言ったら、これは行動を薦める"依頼"だ。ところが、上司から「この資料をコピーして"下さい"」と言ったら、これは行動を要求する"命令"である。

同じ"下さい"なのに、使う立場によって違ってくる。"下さい"とは、どちらも相手に何か行動をすることを求める言葉であるが、相手に考える余地を与えるのは"依頼"である。医者に「少し運動して下さい」と言われても、それは忠告であり、どう受け取って行動するかは、言われた側が自己判断すれば良いのである。

でも上司から「コピーして下さい」と言われているのに、それを"依頼"と受け取って、コピーするかどうかを自己判断していたら組織は動かなくなる。こんなことは誰でも判っているように思えるが、実際の日常ではそう簡単ではない。

ところで、"下さい"を辞書で調べてみると、「くれる」の尊敬語である動詞「下さる」の命令形とある。元々の「くださいまし」が略されて"下さい"となった。言葉から見ると、"下さい"は"依頼"ではなく"命令"なのだ。

「何々して下さい」ではなく「何々しなさい」という強い表現だと、これははっきりと"命令"と理解できる。でも、「何々しなさい」というのは、親が子に言うときや教師が生徒に言うときくらいで、会社の中ではあまり使われない。"しなさい"を丁寧にやさしい表現で使う"命令"が"下さい"だから、誤解が生じる。

韓国語では、"依頼"と"命令"はハッキリと区別されているとのこと。命令は「何々"ハシ"プシオ」、「依頼」するときには「何々"ヘチュシ"プシオ」と言うらしい。

だから、韓国人社長は、日本語では"依頼"は"下さい"、"命令"は"しなさい"と思っていた。日本人の部下に「何々しなさい」というと「え?」という驚いた表情をする。なぜなのか理解できなかったそうだ。

社長が部下に"依頼"することはあり得ない。だから、その社長は"命令"の"しなさい"を使ったのである。ところが日本人は、他人に"しなさい"と言われることに馴れていない。

その社長は、"しなさい"を丁寧にやさしい表現に変えた「何々して下さい」と言い換えた。社長が部下に「この仕事をやって下さい」と言った。社長は"命令"したのである。

日本人の部下は「私はこの仕事をしていますのでとても出来ません」と答えてきた。社長は、その部下が現在行っている仕事のことなど当然知っている。部下は社長が自分がやっている仕事のことを知らないのかと思ったのか、また或いは、言われた仕事をする余裕がないのか、したくないのか判らないが、「とても出来ません」と答えた。

前述のように「コピーをして下さい」と社長から言われて断る社員がいるだろうか。その社長は、自己判断する余地がない"命令"をしたのに、部下は勝手に自己判断できる"依頼"と受け取った。

私は、その社長に、「これは言葉の問題だけではなく、日本人の組織に対する認識の問題だ」と説明した。

恐らく最近の日本人は"命令"されることに馴れていないのだ。和を尊ぶ文化からか、組織内のゴタゴタを嫌う、その結果部下を叱れない上司が生まれ、上司に文句を言う部下が生まれた。

今や日本の会社の中で"命令"はありえない風潮になったのである。組織から"命令"が無くなると、統制は取れなくなる。社長が部下に恐々と"依頼"しかできない文化になったら、その会社は終わりだ。トップが決断して、今の仕事を中断してまでも"やれ"と言って指揮しなければトップなど必要ない。それぞれが自己判断だけで済むのなら、トップが決断することもなくなる。かと言ってそれら部下が社長の"命令"にそむいても責任を取るようなこともしない。社長はトップとして決断したのにそれが機能しないで、結果がでなかったら社員が社長に責任を要求する。まったくダラシナイ組織としか言いようがない。

命令の出来なくなった組織、これはもはや組織にあらず。これは"下さい"という言葉の問題ではなく、組織文化の問題なのだ。

私は、曖昧な日本語をできるだけ用いない。だから、"命令"する時には、「何々しろ」とハッキリ言う。考える余地はない。それが嫌なら、命令の出来なくなった潰れる組織に行ったら良い。

最後まで読んで頂き、感謝申し上げます。

毎朝6時に社内朝礼ブログをこちらで公開しています。こちらもご覧頂けたら幸いです。

この内容に共感頂けたらこちらをクリックして下さい。ありがとうございます。

投稿者 :堀田信弘: 2006年9月28日 07:40