営業の最大の仕事は、訪問することである。訪問することと、訪問されることは全く意味が違う。
自社の製品に興味があると連絡をもらって、こちらに来訪してもらうことは営業の仕事ではない。興味があるという願ってもない見込み客のために、わざわざ足を運ぶことは当然の仕事である。
訪問する側とされる側では、意識が全く違う。
この意識の違いが、”場のコントロール”に繋がる。営業にとって、場をコントロールできることは、話をスムーズに進めるにあたって、最も重要なことである。場をコントロールするということは、ことらが一方的に話ことを意味するのではなく、こちらの意図する商談の流れに沿って、段取り通りのプレゼンが行えることである。
特に、最初の訪問は、その後の営業行為の流れを左右する最も重要な入り口である。最初のたった一日目のたった一時間、これで相手との関係を築かなければならないのだから、神経を過敏にし全身全霊で対応する気構えが必要だ。
”場のコントロール”には、段階とポイントがある。
そもそも場をコントロールするとは、相手のペースに呑まれないことである。不思議なことに、一対一の初対面の人間関係でも、必ず主従関係が生まれるといって過言でない。その主になることが”場をコントロール”ということである。
ただし、ここで言う主とは、上からヒトを見るとか、横柄になるとか、相手の意見を取り入れないという低次元のものではない。
私の言う主とは、場の主(あるじ)のことである。
言い換えれば、その場の主催者とも言えよう。
いくつかのフェーズがある。
初めて訪問し、初対面の場合は、必ず名刺交換する。場の主になるには、ここから始まる。そして、ここから数分間で主になるか従になるかが決まってしまう。
例えば、突然の土砂降りの雨の中、ずぶ濡れになって訪れる。汗を拭き拭き名刺好感する。主はどちらになるか。ずぶ濡れの営業マンである。それは、こんな雨の中わざわざ来てくれたと思わせることができたからだ。
こういう場合もある。電車が遅れたため、アポの時間に3分遅れた。これでは、その営業マンが主になるのは難しい。
しかし、名刺交換から数分間の間は、主と従は行ったり来たりする。お互いに主になろうとする意思があるから、名刺交換で従になっても、まだ主になるチャンスは残っている。
名刺交換後、会社説明などの自己紹介をする。
一般的に商品の説明を聞くほう、つまりお客さんのほうがこの場面では主になりやすい。主の指示に従うような雰囲気があるからだ。そんな時、お客に「それでは簡単に説明してくれませんか」と先に言われてしまうと、これは従のまま推移してしまう。また、同様に、「まず、うちの状況から話をするから、それに対して提案できるものがあったら話をしてくれ」と言われるのも同じだ。こうなると、もう主に返り咲くことは難しい。
私は、自分が営業として訪問する時はもとより、営業マンから商品説明を聞く時でも、できるだけこちらから切り出すようにしている。営業マンから話を聞く時、当然相手もプロの営業だから、「初めてなので、簡単に案内させてくれませんか」と切り出してくる。
私は、こちら側が買う時、まずこちらの課題を言って、それに対して提案がほしいと思っている。こちらが抱える課題を先に伝えるのだから、良く考えれば営業マンにとっては、最高の客のはず。自分が営業マンとして訪問する際には、自分のサービス説明よりも、相手の抱える課題を聞き出すことのほうが本来営業にとって重要なのだから。
しかし、この私のようなタイプの場合、普通の営業マンは主になることができない。
ところが、先日、私のところに来た営業マンが実に見事な切り替えしをした。若い女性の営業マンだった。
いつものように、私が「実は、うちでは...」と切り出そうとすると、とっさに彼女は、「堀田さん、ブログを読んできました。」と私の言葉を遮った。私にとって、こんな若い女性が私の話を遮ったのは初めてだったので、一瞬驚いた。
しかも、「先に自社の説明をさせて下さい」と言ったのではない。もし、そのように遮られていたら、私は、さらに切り返し、「私のほうが先にうちの課題を言います」となるだろう。それを、私が喜ぶような内容をかざすことで、見事に彼女は主をものにしようと試みたのだ。
次に答えるは、「あっそうですか。読んで頂いてどうでしたか?」と従になるのである。
話は、私のブログの話から始まる展開で、中々商品説明に入ろうとしない。この状況から話題を変えるタイミングは営業にとって難しい。一歩間違えれば、再び彼女のほうが従になる危険をはらんでいる。
私はすかさず、「ところで、本題のほうだが」と言いかけると、また彼女が割り込んだ。驚くべき言葉だった。
「私が先にパンツを脱ぎます。」
と彼女が言った。
続けて「折角お会いして頂いたのに、私のほうが何者かを明かさないというのは、失礼だと思います。」
と来た。見事だ。
私は、もう心地よく従になることにした。この若い女性は、物凄い言葉を発し、場をコントロールすることに成功した。
場をコントロールするということは、物凄い神経を使う。そして、場の雰囲気を読み、一瞬の瞬間を見て、流れをこちらに呼び戻す。これができるのは、まずは、場をコントロールするんだという強い気持ちがなければできない。そのことを彼女は、隙あればと狙っていたのだ。
アッパレだ。
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投稿者 :堀田信弘: 2006年11月19日 17:58