総理大臣が執務をするところは、総理官邸である。総理が公に住むところは総理公邸である。各都道府県の知事も公邸に住んでいる。
公邸から官邸までは歩いて数分。官邸では、総理を支えるスタッフが24時間交代勤務で働いている。総理は公人であるから、何時でも官邸に出勤できる24時間体制でいるといえる。つまり、仮の自宅である公邸でくつろいでいても、それは勤務時間内のことと変わらないのである。
以前、上場したばかりの若い社長にお会いした時、「うちの役員は、平日は全員会社の前のマンションから通っています」という話を聞いた。
その社長自身も、渋谷の自宅から会社までわずか30分の通勤時間であるのにも関わらず、その30分が無駄だと言う。
片道30分でも、往復では1時間になる。
営業活動で言うと、通常外回りを行う営業は、太陽が出ているときから太陽が沈む時までしか訪問することはできない。しかも、あまり朝早くは行けないから、概ね8時間ほどの時間しかないのだ。その間に昼食1時間もとれば、正味7時間である。
移動時間も考慮すると、この7時間で訪問できる数は、あまくスケジュールを組み込んで午前中2社、午後4社の計6社がいいところであろう。少しかんばって7社といったところだ。
何れにしても、この調子で朝から晩まで一ヶ月間回ったとしたら、月に120社~130社ほどは回れる。年間1500社になる。
ところがこれは机上の世界で、最初の1ヶ月は出来ても、1年間を通じて1500社訪問を行える精神力、体力の充実した営業マンは早々いない。
そして何よりも、次第に一日7時間の訪問時間確保が困難になるものである。
訪問件数が多くなると、次第にメールの数も増え、事務量が比例して増えて行くからである。
仕事のできない営業マンは、その事務の時間を訪問時間を割いて当てようとする。当然、訪問時間が少なくなる。
できる営業マンは、訪問時間の前後に確保しようとする。
しかし、それでは長時間労働となり、中々精神力が続かない。
一方、会社を経営する社長はどうか。
そもそも社長は、働いているいないに関わらず、24時間責任者である。
その社長が長時間通勤により、体力を消耗し、やる気が減退したら意味がない。しかも、サラリーマンと違って、長時間労働は当たり前だし、夜の付き合いも多い。
社長にしろ、サラリーマンにしろ、家を出た瞬間から、仕事のための時間が始まっている。それが通勤時間だ。実際には、会社について仕事開始から勤務時間となるが、通勤時間はその前段階にある。
サラリーマンであれば、この前段階には、新聞を読んだり、電車で眠ったりして、体力を温存しようとするだろう。この前段階の時間帯に仕事ができたら、どれほどその日の作業効率が良いだろうか。
時間は誰にも平等に与えられている。でも、同じ時間でも使い方によって、その効果は違う。経営者であるならば、もし時間がお金で買えるのなら、買ったほうが良い。
時間を買うことが下手な人は、時間がいくらあっても足りなくなる。睡眠時間を減らして、それにあてる以外になるなる。でも、経営とは一過性のものではなく、永続的に続くものである。ほんの少しだけ我慢して頑張れば乗り越えられるというような問題ではないのだ。
実際に私も、平日は単身赴任で会社のすぐそばのマンションにいる。そのマンションは会社で借りたものだ。しかし、全役員に同じように近くに住むようにすることはとても困難なことも事実だ。
家族があるからだ。マンションは会社で借りても、小さな子がいればベビーシッターが必要になるかも知れない。あるいは、祖父母が孫の面倒を見てくれるような環境がなければできないかも知れない。学校のこともある。
私の場合は、息子が障害者なので、私が単身赴任するのと同時にホームヘルパーを雇った。
時間を買うということは、相当高い買い物である。でも、経営者なら、普通は変えないものだからこそ、考えて見る必要はあると思う。
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投稿者 :堀田信弘: 2006年11月27日 09:07