私の父は、柔道をやっていたので、幼少の頃に叱られると、必ず投げ飛ばされていた。それでも、勝気な私は、親父に向かって行って、母に止められるまで投げ飛ばされた。
高校に入ると、普通の体育とは別に、柔道の授業があった。小さな頃の経験から、柔道の授業は好きだった。
クラスには、柔道部のものもいたが、ほとんどは未経験である。一通りの受身を習い、投げの形を覚え、組み稽古と進んだ。
柔道と言えば、何と言っても、柔よく剛を制すだ。弱いものがやり方によっては勝てるというものだ。小さいものが、大きい人を投げ飛ばす、何とも爽快な気分になるのが柔道である。相手の体重を利用する背負い投げは、まさに柔よく剛を制すの典型である。
私は、部活や道場などで本格に稽古した訳ではない。しかし、小さな頃から投げられていた経験で、不思議なことを感じることができた。
それは、相手と構えた瞬間、相手の実力がある程度把握できるのだ。襟を掴んだ時、強いか弱いかを感じ取ることができる。引きが強いと思った瞬間、投げられていたりするものだ。弱いと思った人には、先に攻めることができる。
気持ちの持ちようとでも言えるのだが、柔道の経験をした人ならば、恐らく多くの人が感じることができるだろう。
でも、本来、柔道の醍醐味は、柔よく剛を制すである。強いものがその通り強いのでは面白くない。構えた瞬間、強いと感じても、見た目が大きな図体であっても、投げ飛ばすことに柔道の面白さがある。
先日、ある会社の社長と飲みに行った。
普段その社長は、ブラックジョークを言い、大声で笑う豪快な人だ。社内でも、常にテンションが高く、明るいユニークな評判らしい。” らしい”と言うのは、本人が自らを評しているからである。
こういう人に限って、小心者であることが多い。
社内で人気があると思い込んでいる社長はアホだ。
そんな人は、お山の大将タイプである。自分が採用した部下たちの頂点にいれば、誰だって、豪快な振る舞いは出来るだろう。自分のペースだから、ジョークも言えれば、ハイテンションで仕事ができるのだって当然である。その小さな城の殿様なのだから。
しかし、お山の大将は、外に行くと小心者に変身する。
おとなしくなり、言葉も少なく、話をリードすることが全くできなくなる。つまり、相手が強いと思えば、弱くなるのである。相手が弱いと強くなる。仕事を出してやっている側だとか、年が自分のほうが上だと思った時は、いつものように自分のペースで進められる。
社内で元気であっても、社外では元気が出せない。社内で元気だと思っているのは自分だけで、周りはうっとうしいと感じていることにすら気がつかない。自分を明るく元気だと評することができるのなら、どこに行ってもそうあるべきである。大体にして、元気か明るいかなどは、人から評されるのであって、自分のことを言っていること自体、小さな自分を精一杯大きく見せようと見栄を張っているに過ぎないのである。
こんな社長の部下は悲しい。
社長と同行しても、社長の勇ましさを見ることなどできないし、情けない姿しか見れない。このギャップに社員は唖然とするものである。
柔道と同じように、ビジネスの世界では、名刺交換をした瞬間に相手の強さを感じられる。強いと思って、こちらの気持ちが弱くなったら投げられる。これもビジネスの鉄則である。
相手の力を利用して相手を制する。そうすれば小さい者でも大きな者を倒すことができる。これが柔よく剛を制すである。相手の力をどう利用するかが大切なのである。
力の差が歴然としているなら、方向を変えるしかない。例えば、大きさに対してスピードのように、勝負の内容を大小ではなく、速さに変えるのだ。同じ分野で戦っても仕方ないのであれば、話す分野を変えるとか。
それでもダメなら、相手の力を利用するのである。話が豪快で話が止まらない相手には、トコトンおだてて、話をあわせ場を盛り上げる、そして、相手が興味を持った話題に体重を乗せさせて、背負い投げだ。
ビジネスの世界の背負い投げは、相手を打ち負かすのではない。相手と対等に対話して、相手に気に入られ、パートナーとして真剣な取り組みができることである。話してもつまらない、相手にならない、役に立たないと思われてはいけないのである。相手が大きいと思って、小心者に変身しているような状態では、お山の大将から抜けられず、いつまで経っても器を大きくできない。
大物とあってビビッていては、大物と手を組みことなどできないのだ。大物は、そんな小心者を相手にもしないものだ。大物だからこそ、胸を貸してもらう勇気が重要である。
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投稿者 :堀田信弘: 2006年12月28日 08:12
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