経済学で有名なぺティ・クラークの法則というのがある。この法則は、「経済社会・産業社会の発展につれて、第一次産業から第二次産業、第二次から第三次産業へと就業人口の比率および国民所得に占める比率の重点がシフトしていく」という法則である。
私が住む茨城県は、広大な関東平野と利根川、霞ヶ浦の大量の水によって、農業が発展した。大量の人口を抱える東京の近郊ということもあって、都市向けの近郊農業として反映した。今でも農産物の収穫高は、北海道について第二位である。
しかし、末端の生産農家よりも、農産物加工業者のほうが利益が出やすい。それはなぜか。
農家の最大のリソースは、土地。この土地の環境によって、収穫可能な作物が決まってくる。利益を上げるには、付加価値の高く、希少価値のあるものを扱うというのもひとつの方法だ。しかし、どんなに希少価値のある作物を作っても、永続的に右肩上がりで成長させるのは、土地を拡大するしかない。最大のリソースが土地だから、土地を倍にしなければ、収穫高を倍にするのは困難である。
すると、農家で一定の利益を上げた人たちは、その作物に付加価値をつけた農産加工物を作ろうと考える。100円の収穫したての作物を、味付けをして、ビンや缶に詰めて売ると、500円にもなることがある。しかも、加工物は、季節を問わず扱え、様々な作物を扱うことで、天気の影響を少なくすることも可能だ。人手による加工から、機械化を図ればさらにコストを削減し、かつ、大量の加工物を生産できるようになる。
こうして、工場化が始まる。
工場の最大のリソースは、設備だ。機械などを最新の設備にすることで、益々自動化が図られ、人件費を削減できる。人件費を削減できれば、海外で生産されるものと値段的にも真っ向勝負が可能になる。しかも、原材料を様々なところから運ぶことで、農業のように土地柄の影響を少なく抑えることができ、しかも大量の製品を生むことができる。
そして、農地は、工業団地に転用される。茨城県の工業団地への企業立地件数は全国一位だ。製造品の出荷金額は10兆円を越す。大きな工場は、交代勤務でフル稼働される。そのため、大量の職を生み、農民はサラリーマンとなり、兼業農家化していった。
しかし、工場の稼動は景気に左右される。フル稼働で人手不足かと思えば、扱う製品によっては、一瞬にしてリストラが行われ、工場閉鎖さえ起こり得る。現に、茨城県の場合、製造品の出荷金額は、1997年をピークに減少を続けている。軽工業は微増傾向にあるものの、重化学工業の生産高の減少は著しい。そのため、鹿島臨海工業地帯や、工業都市日立市の人口減少も進んでいる。
茨城県の地形は、南北100キロメートルと長い。南は、東京から50キロ圏内。そのため、東京のベットタウン化が進み、東京県民と呼ばれる東京に通勤する人が多い。北では人口が減少し、南では人口が増加しているのだ。そのため、人口の多いところでは、急激に都市化が進み、新しく住み着いた人向けのビジネスが誕生する。
土地が広く、車の利用が多いため、国内最大規模の超大型ショッピングセンターや、電気店、大型ドラッグストアーなど、北関東発のアメリカ型ビッグ店舗が次々に誕生している。
そして、ついに県内就職者の就職先は、製造業などの第二次産業とサービス業などの第三次産業が並んだ。
でも、ぺティ・クラークの法則により、このまま第三次産業のほうが第二次産業を上回るのだろうか。
そもそもサービス業のような第三次産業は、販売が中心になる。作られたものた、加工されたものを売るのが中心となる。では、それは誰に売るのか。買う人が集っているところでなければ売ることはできない。人口集積が進み、しかも拡大していかなければ、消費が拡大することはない。
そう考えると、日本全体で考えた時、人口が減少するということは、国内向けの販売は何れ限界がくるということだろう。人口が増加する中国などに販売拠点を移さなければ衰退する。さらに、販売拠点を移せば、残された国内はもっと減少傾向を向かえる。
ぺティ・クラークの法則は生まれた1940年代は、人口減少など考えていなかったのではないか。人類が始めて経験する人口減少社会は、これまでの考えが全く逆転することも意味している。増加を中心に考えてきた法則だが、減少を前提に考えると、第三次産業から第一次産業へ回帰する可能性だってないとは言えない。
中国の人口が増加し、食料輸入国に転じた今、日本は、農作物を輸出すべきだ。休耕などをしていないで、良質の米を生産し、付加価値をつけ、中国の富裕層に売れば良い。
企業でもこのぺティ・クラークの法則は参考になることがあるように思う。衰退の陰は、発展と共に常に忍び寄っている。
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投稿者 :堀田信弘: 2007年1月 3日 08:35
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