百回話を聞くより、一度でも見る方が分かりやすいことを、百聞は一見にしかずと言う。実際に行って見て経験したほうが、机上の世界より大切であることは言うまでもない。
できるだけ多くの経験をしたほうが、理屈でなく体で理解できる。しかし、経営とは、経験したこと、つまり過去の経験則だけでは未来を切り開けないのも事実である。
私は、確率よりも可能性で選べる経営を目指している。
経験則で、確率の高い選択をすることに面白さは感じない。特に若い人たちには、わずかな可能性に挑戦する勇気と気概を持ってもらいたいと思っている。なぜ、若さが重要なのか、それは、未経験だからこそ恐れを知らない可能性を選べるからである。
未経験だからこそ、経験に捕らわれない発想が生まれる。とても大切だ、しかし。
空論ではダメだ。
無鉄砲さを求めているのではない。
天邪鬼な屁理屈を求めているのではない。
可能性を見出す人になってほしいのだ。
未経験の人が、経験則に負けない、確率に負けない、可能性を見出すには、それなりに理論武装する必要がある。私が言う理論とは、信念に近い。しかし、その信念を持つには、出来るだけ多くの失敗や成功など様々な経験をしないと言えない矛盾があることも事実である。
百聞は一見にしかず。相手が経験則で言ってくれば、経験則には勝らないとの謙虚さがなくてはならないと肝に銘じつつ、その上で勝負しなければならない。
経験則に勝るには、一つの方法として仮想経験則がある。いくら百聞は一見にしかずと言っても、誰しもそんなに多くの経験をすること不可能である。ならば、誰よりも多くの仮想経験をする必要がある。
その方法は、本を読むことである。
本を開けば、名刺交換をすることもできない松下幸之助と出会うことさえできる。実際に松下幸之助と一緒に働いた人には勝れないが、一緒に働いた人が言う経験則のすべは少なくても理解できる。もし、本を読んでいなければ、経験者と議論する余地さえない。
本を読んで、何かを仮想経験することは、良いと思うことだけでなく、自分は違うと思うこともできるようになるものである。
本を読んでいるか。
小説でも良い、専門書でも良い、本を買う人は、知識や知的な心の豊かさを身につけたいと考えているはず。ビデオや映画鑑賞と言った視覚で映像を押し付けられるのと、活字から想像を余技なくされる本とは、比べようがないくらい仮想経験をすることができる。映像の仮想経験は、仮想と言うなの作られた実態であって、自らが頭の中で考え想像する見えない仮想の姿とは似て非なりである。
私は、これまでも何度も本を読むことを社員たちに言ってきた。
できるだけ多くの仮想経験をしたいと思う気持ちがあれば、時間の取れない中でも必死で読むはずだ。それは、未経験のものが経験則のものと対等に向き合うためである。
子会社のソニックブラスター(株)は、IT業界未経験者を育て教育する会社である。代表の時田社長は、社員のために、自らが知識を高める必要として購入した技術専門書を、読み終えたら半額で買い取る制度を発案し、実践した。
技術書を買って勉強することを促し、さらに、後輩たちができるだけ多くの本を手にできるよう考えたのである。
毎月一回開かれているドリクラ社長会でこの話題が出て、全会一致でグループとして取り組むことを決めた。
ドリクラ文庫を作る。
壁を本で埋め尽くし、先輩たちが手に取った本を後輩たちが読めるようにする。どうせやるなら、社内図書館日本一を目指そうか。
ドリームクラスター・グループの各社が求める人材について、技術書、教養、辞書、あるいは人間形成と必要とあらば小説でも歴史書でも、各社の判断で社員が読み終えた本を半額で買い取る。
会社の壁が本で埋め尽くされたとき、それは何を意味するか。
その壁を見て、社員は何を感じるか。少しでも、確率よりも可能性で選べる道具になってくればそれで良い。
ドリクラ文庫。また新しい私の夢ができた。日本一の社内図書館。
最後まで読んで頂き、感謝申し上げます。
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投稿者 :堀田信弘: 2007年5月27日 08:28