先日、近所のラーメン店に行った。
入り口を入ると威勢の良く「いらっしゃいませ」と大きな声で出迎えられる。どこのお店に行っても「いらっしゃいませ」と言わない店はない。当然のことだ。入り口のそばに券売機が置いてあった。
券売機で種類を選び、お金を入れるとおつりと券が出てくる。
席につくと、水が出され、券を持っていく。
その間、挨拶がない。
「お待たせしました」とラーメンが出される。食べ終わって店を出る。
少ない店員でやっているせいか、客が出て行ったことに気がつかなかったのか、「ありがとうございました」の一言がない。
それにしてもおかしい。入って来る時は、「いらっしゃいませ」と気がつくのに、出ていく客に気がつかないはずがない。なぜだろうか。
この出来事を友人に話した。
その友人は、若い頃に吉野家でアルバイトをした経験を教えてくれた。
吉野家は、「早い、安い、美味い」という合言葉通り、客が席についてから、「お待たせしました」と牛丼が出てくるまで30秒以内である。この時間が短いほど、客は退屈しないし、店の回転も良くなるという訳だ。
ライバルの松屋では、入り口に券売機を置いて、客が券を買うと同時にその内容が厨房に送られて調理が始まる。発券をしてから客が席につくまでの約10秒が短縮され、さらに席についてから水を出すまでの10秒も同時に短縮させることで、客の回転をよくしようとしている。
味はさて置き、松屋と吉野家の最大の違いは、料金を先に払うのか、後で払うのかだ。
「早い」を競い合うのなら、吉野家も券売機と連動したシステム化をすれば、松屋と同様に待ち時間は短くなるし、客の回転も良くなるはずである。しかし、吉野家には券売機がない。
券売機を置かない理由は、次の通りだそうだ。
客が入って着てから、客が店を出るまでずっと客と接点を持つためだ。
券売機を置くと、客が食べ終えたことを認識できなくなる。席を立った時点で「ありがとうございます」と言っても、誰に向かって言っているのかわからない。
私はこの話を聞いて、最近のIT化、システム化におけるサービス感の欠如を強く感じた。
システム化して効率をあげ、自動化してミスを少なくするのがIT化だ。ITの活用によって、大幅な業務革新が可能になる。しかし、それを作るのも、使うのも人間だということである。
別に「ありがとうございます」など言わなくても良いじゃないかと思う人もいるだろう。ネットで買えば、自動的に「ありがとうございます」のメッセージが表示され、一瞬で「ありがとうございます」のメールが飛んでくる。「安くて、簡単で、直ぐ」だ。
別に味が良ければ良いんじゃないかと思う人もいるだろう。IT業界の中でも、技術さえあれば、客がついてくると思っている人が多い。
私は、違うと思う。
IT業界は、サービス業でなければならないと思っている。「ありがとうございます」の一言が言えないような人が集まって、立派なシステムを作っても、使う人の立場など考えられるはずもない。
私は、あのラーメン屋には、もう二度と行かない。美味いとか不味いじゃないんだ。
私は好きじゃないだけ。私は、この好きか嫌いかの考え方に、サービスに関する考え方の違いが出るのだ思っている。
どちらも間違いではないし、私が正しいのでもない。ただ、私は「ありがとうございます」が言えないサービスは好きじゃない。
最後まで読んで頂き、感謝申し上げます。
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投稿者 :堀田信弘: 2007年6月23日 07:37