今、私は韓国ソウルに来ている。滞在中のホテルでは、日本の衛星放送がそのまま放映されている。それ位に日本とは近い。
韓国の人口は、約5千万人。男子には徴兵制が義務付けられ、約60万人の軍隊を持っている。日本の自衛隊が約23万人だから、人口比で見ると、いかに軍隊が重要か把握できる。
隣の北朝鮮は、人口2千万人、その10%にあたる200万人が軍人である。まさに韓国と北朝鮮は、冷戦状態の戦時中であると言っても過言ではない。
戦争が終わって、僕らは生まれた。戦争を知らない子供たちさ。
私は戦後生まれだから、戦争を知らない。祖父母や親から悲劇的な戦争経験話を聞いても、話の世界でしか知らない。実体験がないのだから、判れと言っても無理なのだ。
それは、逆に言うと、戦争の恐ろしさを理解していないのだから、本当の意味で平和の大切さも理解していないとも言える。
今が平和だと認識できているとしても、その比較対象となる戦争を認識していないのだから、平和の大切さを知る大きさは、戦争を知っている人の比にはならない。
だからこそ、戦争を知らない人は、知っている人に少しでも近づく努力をしなければ、大切な平和への思いは軽くなる。当たり前のように目の前にある平和を軽く考えれば、今度戦争を起こす人は、戦争を知らない世代に間違いない。
だからこそ、戦争の悲惨さを知ることが重要なのだ。
知らないことを知ることは重要だ。しかも、経験した人の話を、経験していない人が、素直に聞く姿勢は重要である。経験した人がいなくなれば、それすらできなくなるのだから。
わが社の最大の弱点は、戦争を知らない子供たちが経営者になることである。
ここで言う、戦争を知らないというは、会社設立時のことである。
会社が出来て社長になった瞬間、報酬が貰え、その月から売上の目処がある。事務所もあれば、電話もある。社員だって直ぐに配属されることさえある。
通常会社を立ち上げたときは、客もない、金もない、社員もいない、何もない。お金が減り、眠れない日々が続き、倒産する夢を毎日見る。家族を不幸に落とし入れ、その姿は正に戦争中のようだ。たった人で始めれば、戦時中の孤独と不安と葛藤そのものである。
一日も早く戦争を終え、平和な日が訪れることを願って必死に考え、行動する。
時々飛んでくるミサイルや地雷を踏まないように、慎重に慎重に、それでいて一気にその戦場から逃れようと猛スピードで走る。限られた武器を持って、助け合う仲間を追い求める。一人が二人になった時の喜びと、これから苦労を共にする友情を確認する。
二人が三人になった時、三家族分の生活の心配がよぎるようになる。こんな少人数の部隊に参加してくれた感謝と、同時にどうやってチーム力でこの難関を突破するか考える。
やがて、遥か遠くに明かりのついた小さな村を見つける。
助かった。
こうして、平和を手に入れる。
経験したことがない社員に言っても、昔話、自慢話にしか聞こえないかも知れない。戦争を通じて、敵の動き、敵の戦略、敵の攻撃を目の当たりにする。それを通じて、武器をかわす方法を学んだり、敵の弱点を見つけたりする能力を身につける。
戦争が終われば、戦争のときに経験した悲惨な体験、見方の大切さ、チームワークの必要性を肌で理解できる。そして、何よりも今の平和を守り発展させるには、戦争当時の苦労と、二度と戦争時代には戻りたくないという確固とした気持ちを持つようになる。
だからと言って、戦争を知らない子供たちに、戦争を体験させようと言うつもりはない。
しかし、平和は与えられるものではなく、勝ち取るものであることは理解させたい。黙っていては、平和は訪れないし、放っておけば平和は崩壊する。会社だって、一瞬でも気を緩めれば、簡単に崩壊する。
わが社の最大の弱点は、戦争を知らない子供たちが経営者になることであるが、逆に考えれば、だからこそ、最大の長所でもある。生まれたときから、全ての道具や環境が揃っているのなら、どこの会社より一気に立ち上がることが可能なはずだ。
戦争を知らない子供たちは、きっと平和を守ってくれるだろう。知らない子供たちができることは、それを守ることのみである。
でも、守ることはそう単純で、そう簡単ではない。それは戦争を大人以上に、苦労をしなければならないのかも知れない。
戦争が終わって、僕らは生まれた。戦争を知らずに僕等は育った。おとなになって、歩き始める。平和の歌をくちずさみながら僕等の名前を覚えてほしい。戦争を知らない 子供たちさ。
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投稿者 :堀田信弘: 2007年6月26日 08:25