80万円で仕入れた商品を100万円で販売したとする。利益は20万円だ。この会社は、この商品が毎月売れていれば、人件費等のその他の費用を取りあえず無視すれば、黒字経営である。
ところが、会社の血液とも言える資金は別である。この会社を例にとれば、仕入れた80万円の代金を30日後に支払い、100万円の売り上げ金は、販売できた日から60日後である。つまり、最初にお金が出て、後からお金が入るのだ。
この資金の流れ方は、一般的な商売では普通である。現金商売であっても、売るための商品は最初に仕入れなければならない。
モノを作る会社でも同じだ。モノを作る社員の給与のほうが、モノが売れる時期よりも遅くなるはずがない。売れるかどうか別にして毎月給与を支払い、後から売れた分のお金が入る。
冒頭の例で言えば、黒字経営であるが、借金をしなければ会社は回らない。簡単に言えば、毎月80万円の借金をして、翌月売上があった時点でそれを返済するということを繰り返す。つまり、毎月80万円の資金余裕がないといけないのである。
黒字倒産というのは、この80万円分の資金が調達できなくなった時である。
IT業界も、売上の入金前に、社員の給与と外注費が発生する。6ヵ月のプロジェクトであるならば、入金されるのは8ヵ月後である。その間、給与と外注費が出て行く。数千万円が必要となるプロジェクトであれば、そのためにはそれだけの体力がないと請けられない。
銀行は、決算書をベースに貸出を検討する。時期のずれている売掛金が買掛金を上回っていれば、その分が運転資金として必要と判断される。しかし、決算書には出ない資金需要というものもあるのだ。
支払が30日後で、売上も30日後のプロジェクトの場合である。支払が1億円で売上が1億2千万円だとすれば、2千万円の黒字プロジェクトである。ところが、このようなプロジェクトは、決算書で表現されない。
売掛金と買掛金が同じ日だから、決算書上は売掛金が買掛金を上回り、必要運転資金とならない。
しかし、実際には、同じ日であっても、支払のほうが先にされる。売上が入ったのを確かめてから、支払うというようなことが事実上できないのである。事実上できないというのは、もらう側も払う側も同じ立場におかれているのだから、自分だけが入金を待って支払処理をするとすれば、当然、支払を受ける側は入金が遅れることになるからである。
つまり、この例では、30日の朝一番に1億円が口座から出て行くのである。入金はその数分後かあるいは何時間後となるのだ。よって、1億円の資金がなければこのプロジェクトは請けられないということなのである。
こんなに長々と説明しなくても、ほとんどの経営者は日常的な資金繰りをしており、言われなくても知り尽くしている話である。
ところが、経営者、とりわけ社長にならなければ、このような当たり前の事実を意識しないし、例え頭では知っていたとしても、痛みまでは感じとることはできないであろう。
恐らく有能な部長でも、あるいは事業全体を任された事業部長でも理解できないはずだ。なぜなら、事業を任されたとしても、資金繰りまでは任されないからである。もし、資金繰りまでを行っているのなら、それはもはや事業部ではなく、会社である。
だから、そのような人たちに知ってほしい。
会社は、黒字でも倒産する。そして、倒産は、倒産するのではなく、倒産させられるのである。誰にさせられるか。それは銀行にである。
資金がショートすれば、注文があろうが、黒字であろうが、支払が滞る。資金を調達できなければ、会社の血液であるお金が体に行き渡らなくなり、心臓が止まるのである。その血液の流れを止めるのが、銀行だ。
銀行は、貸さない理由として、何ともし難い納得せざる得ないことを言ってくる。しかし、それが本当の理由ではない。
銀行員の本音を聞くと、社長の熱意と事業性による判断が大きい。社長に覇気がなく、社長が自信にみなぎっていなければ、会社が伸びるはずがない。社長が必死であるかどうか、社長が本気かどうか、社長に魅力があるのか、それが問われる。
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投稿者 :堀田信弘: 2008年9月18日 06:27