【堀田信弘の今日の語録】 『この会社は、きっと伸びるだろうな。他の会社と違うことができること自体に可能性を秘めているから。』


企業経営について  「活・喝・勝」


儒教の五常

私は、一ヵ月の半分近くを海外、特に東南アジアで過ごしている。アジアの国々に行くと、日本で失われてしまったものが沢山残っているように感じる。特に、中国の周辺国である韓国やベトナム、ミャンマーに行くと、儒教の影響を強く感じる時がある。

儒教は、宗教ではない。孔子の哲学、思想、思考、信仰を体系化したもの。儒教は、日本も含め東アジアの国々に広まり、多くの影響を受けた。

儒教には、人が常に守るべき五常という考えがある。仁、義、礼、智、信が五常である。

仁とは、人を思いやること、礼とは、仁を具体的な行動として表したもの。思いやり、その気持ちを行動で示すという仁と礼は、 人間関係を構築するうえで、孔子が最も重要な倫理観の基本とした。
ベトナムや韓国では、父子有親や君臣有義、長幼有序というかつての日本でも見受けられた考えが今でも強く残っている。

日本では、明治時代、大企業や官営工場が熟練工の足止め策として定期昇給や退職金制度、賞与制度などを導入した。そして、長期勤続を誘導することで、従業員の熟練技能を形成させ、同時に従業員の企業忠誠心を高く維持しようした。

かつて、日本企業の強みは、儒教の父子有親や君臣有義、長幼有序を取り入れた年功序列や終身雇用制だったのだ。あの松下幸之助も、「親を敬い、上司を敬い、友達を敬い、自然を敬う」と、父子有親や君臣有義、長幼有序の大切さを言っている。

しかし、バブル崩壊後、リストラを余儀なくされ、グローバル化の掛声のもと、年功序列や終身雇用制は完全に崩壊してしまった。そして、最近では、これまでの日本のやり方では世界に通用しないとアメリカに言われ、日本人自らも世界に通用しないと、日本流を捨てることにしてしまった。

ところが、捨ててしまったのは企業制度として崩壊させただけでなく、父子有親や君臣有義、長幼有序という儒教的な考え方までが崩壊させてしまっようだ。年上の先輩を尊重し、上司を敬い、親を尊敬するという人間として、仁と礼という考えが完全に崩れ去ってしまたのだ。

もしあの時、バブル崩壊していなかったら、年功序列や終身雇用制という日本独自の経営は残っていたことだろうか。

私は今、ベトナムの子会社で年功序列を取り入れいる。そして、離職者を防ぐために長期勤続者を優遇する終身雇用に近い制度を取り入れている。しかし、ベトナムでは、儒教の考え方はあるものの、アメリカや日本を真似るが如く、従業員の企業忠誠心は低く、個人、家族主義が極めて強い。そして離職率も高い。

私は今、年功序列や終身雇用制が100%問題だとは思っていない。また、能力主義や成果主義も100%問題だとは思っていない。どんな制度でも完璧なものはないし、その制度を導入する意味、意義を理解してもらうことのほうが遥かに重要だと思う。できれば、 100%の社員ではないにしろ、大部分の社員が納得できるものが良いのだろう。

だが、いつの時代でも、会社の制度は、経営の都合であり、会社を守るための手段だ。それを理解しろと言うのは、あまりにも押し付けなのかも知れない。

バブルが崩壊して、20年近く経とうとしている。そして、今度は、アメリカ発の金融危機をむかえた。そうなると、日本がグローバル化の名のもとに真似をしたアメリカ流の経営は、本当に正しかったのかと疑問に思う。今度は、どの制度を改め、どこの国をモデルにすれば良いのだろう。

私は、かつて入社式で、ダーウィンの「強いものが生き残るのではなく、変化に対応できるものが生き残る」と言った。

しかし、今、振り返って見ると、「変化に対応するものが生き残るのではなく、信念が強いものが生き残る」と思えてならない。

制度や方法を変化させて、何とか生き残れるかも知れないが、人間が人間らしく生きるための考え方までは変化させてはならないと強く感じる。考え方までを変えて、変化に対応しようとしても、結局は、変化という波から逃れているだけで、そのような小手先のやり方では、いずれ変化に飲み込まれるだろう。変化しても飲み込まれて後悔するくらいなら、飲み込まれるのを覚悟の上で、後悔しないように変化しない生き方もあるのかとも思う。

私は改めて、企業経営の基本は、人の集団である組織運営にあると考える。企業の中心は、人。人の心をどうつかみ、働く意味と意欲を共に考える組織にしなければならないと痛感している。

そのためには、人を思いやり、礼儀を大切にする儒教的な考え方を学び直すことも大切なことかも知れない。

最後まで読んで頂き、感謝申し上げます。

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投稿者 :堀田信弘: 2008年11月15日 05:52