人生は取捨選択の連続である。今ここで会社を辞めて転職しようか、独立しようかなどと大きな転機を向える人もいることだろう。
取捨選択とは、悪いもの、不必要なものを捨てて、良いもの、必要なものを選び取るという意味である。漢字では、取るべきものと捨てるべきものとを選択すると書くが、意味は、先に捨てて、後から選ぶということだ。
私にとって、この順番の違いは大きい。
つまり、人生は、取捨選択ではなく、捨取選択なのである。
冒頭の例のように、転職なり独立するには、最初に今の会社を辞めなければならない。こっそりと転職や独立を成功させてから、会社を辞めるなどということはあり得ない。
これからやりたいこと、やらなければならないと決めたら、それを実現するために何かを捨てることになるのである。
捨てるものは、現在である。現在は現実であり目に見える形がある。それに対して、これから得ようとするものは、未来である。未来は理想であり、今この時点で目にすることができない。
つまり、未来という理想を手に入れるには、現在という目に見えるものを捨てなければならないのだ。これは、ほしいものを得るには、先に何かを捨てる、失うというリスクを負うことである。
まだ見ぬ未来を得ようとするためには、当然それ相当なリスクを負う必要があるのだ。そのリスクを背負ってまでも、そのまだ見ぬもののために自分を試してみようという意気込みがあれば、それなりの動きをし、未来が現実のものとなり得るのだ。
経営者は、日々が捨取選択である。何か得るために、何かを先に捨てなければならない。私は、いつもこのような気持ちで選択してきた。
しかし、多くの経営者は、文字通り取捨選択を、何か得るために、何かを捨てなければならないということは知っていても、先に捨てるという考えを持ち合わせていないようだ。
そればかりか、得ることのみを考え、捨てること失うことを全くできない者が多い。
社長になった。本来であれば、この時点で、いやこの以前に何かを捨てていないといけない。例えば、大好きな趣味を止め、土日も夜間も会社のために費やす、蓄えた貯金を資金にあてるなど。
私は、得ることよりも、捨てることのほうが難しいと考えている。難しいからこそ、捨てることを先に行い、得ることへのリスクを持って挑戦できるのだと思う。
ある事業を始めるには、ある事業を止める、いわゆるスクラップアンドビルド方式である。つまり、スクラップアンドビルドとは、捨取選択なのである。
取捨選択的なビルドアンドスクラップではない。限られた土地を有効に活用するためには、今建っているものをスクラップして、さら地にしてから新しい建物をビルドするのだ。今の建物を改築、増築するようなやり方は、過去の古い柱を温存して、見たくれだけを変えるようなもので、最新の耐震構造に変えることはできない。
これまでの改良、改善のような既存を温存する生温いやり方では、今の激動の時代では通用しない。目指すは既存を否定する革命的な発想であり、そのためにはスクラップアンドビルド的な考え方が重要なのだ。
スクラップアンドビルドと口にするのは簡単だ。しかし、そのような大それたことでなくても、普段より捨取選択ができていないような人が、実際に大胆なスクラップアンドビルドなど出来やしない。仮に、そのような方向性を見せたとしても、スクラップしてそこでお終いだ。
なぜ、スクラップするのか。それはビルドするためだ。私は、先に捨てることは難しいし、重要だと言った。それは、何が何でも得たいという気持ちを持たせるためである。決して捨てることが投げ出すことではない。つまり、スクラップだけしてビルドができないようなでは、何ら意味がないのである。
何が何でも得たいという確固たる決意があるのなら、今を捨てる、壊す、失うリスクを取るべきである。そのリスクが高ければ高いほど、その確固たる決意に向かって必死で動くからである。
経営は、取捨選択ではなく、捨取選択だ。
何かを得るためには、何かを"先に"捨てることをしなければならない。
その精神があるならば、何かを変えようとするのなら、それを指揮するリーダーは、自分の生活習慣を変えるなり、自分の好物を捨てるなりして、自分が進んで変わろうとしなければ、変わるはずがない。つまり、変えることができないと嘆くリーダーは、捨取選択ができず、自分を変えることもできないのである。
社長になったら、まず安定的な生活など捨てるべきだ。サラリーマンのような安定した生活を望んでいるようでは、自らを不安定で厳しい環境にすることなどできない。自分だけが安定的な生活をしていて、自分だけが生き延びようとする考えで、誰がこの厳しい時代の中で、そのような人の改革だという叫びについて行くものか。
まずは、自らを厳しい環境に追いやることだ。自分が甘い環境にいて、リストラなど言語道断である。捨取選択できないリーダーは、人の上に立ってはいけないのだ。
社長は、自分がほしいものを借金までしているようでは失格なのである。得たいものを先に手に入れ、借入をするような余裕があるなど、本気で会社本位で考えていたらそんなことできるはずもない。
経営は、取捨選択ではなく、捨取選択なのだ。しかも、社員をリストラするより、自分を先に捨てるべきだ。会社を守りたかったら、自分を守るな。
捨取選択は、その経営者が人の上に立つ資格があるかを示すものである。
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投稿者 :堀田信弘: 2009年1月 7日 05:19
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