【堀田信弘の今日の語録】 2010年7月31日 『衰退の陰は、発展と共に常に忍び寄っている。』


企業経営について  「活・喝・勝」


無意味な中・長期経営計画

『中・長期経営計画策定の重要性。将来の経営環境が不透明で、企業の先行モデルが見当たらない現在こそ、中・長期経営計画を持つことの重要性が高まっているといえます。将来の環境変化をしっかりと見据えた上で、企業独自のスタンスを明確にした計画づくりが必要です。』

これは、あるシンクタンク会社のHPに書かれている内容だ。

1年前の今日、2008年1月15日の為替相場は、1ドル110円だった。2年前の今日、2007年1月15日の為替相場は、1ドル122円だった。そして、先月12月18日には88円になった。

この1年間で25%も円が上昇した。2年間では39%アップである。

2008年5月8日に発表したトヨタの2007年決算では、営業利益は2兆2,703億円だった。そして、昨年アメリカに端を発した世界同時不況。トヨタの2008年決算では、1,500億円の赤字に転落する。

この事態を、1年前の今日、誰が予想していただろうか。

シンクタンクに所属するアナリストは、経済評論家は、トヨタの経営者は、予測できたのだろうか。

そして、今。今年は、誰もが不景気が続くと予想する。経済のことを知ろうが知るまいが、誰でも同じように不景気が続く予想する。誰か一人でも、今年は景気が良くなると予想する人などいない。

しかし、それは、1年前の今日でも同じだ。

結局は、今の世の中で、1年後を予測するというのは極めて難しいということである。

なぜならその原因は、新興国の発展にある。

例えば富裕層の数。3,000万ドル超の資産を持つ超富裕層は、日本が約5,300人なのに対し、中国は昨年6,000人を越えた。インド、ベトナムでは、前年比20%以上で増加している。今や、100万ドル超の富裕層の数は、世界の3分1をアジアが占めるようになった。

つまり、これまでの100年間と、ここ数年間では、世界の経済情勢が激変してしまったのである。世界同時不況は、100年に1回の大不況と言われるが、それとは別の次元で見れば、100年かけて形成されてきた市場が、たった数年間でひっくり返ってしまったようなものである。

つまり、地殻変動が起きているのだ。この動きは、これからも続くだろう。他国の状況だけでなく、日本国内を見ても、数年先の日本を予測することは困難だ。今年1月1日時点で、昨年一年間に一つの市に相当する51,000人の人口が減少した。このままだと20年もすれば人口は半減してしまうかも知れない。

このような状況で長期予想などもはや意味をなさない。

冒頭の、中・長期経営計画策定の重要性。3年ほど先を計画する中期計画、5~10年先を展望する長期計画。そのシンクタンクの中・長期経営計画には、何がどれだけ以外なことが起こることを計画されていたのだろうか。

私は、かつて経営企画という立場にあった時、中・長期経営計画策定に関わっていた。絵に描いた餅のようだった。

世界中のエコノミストが集まって、議論を重ねても、ひとつも当たらない。ノーベル経済学賞を受賞した人が立ち上げたファンドでさえ破たんする。そんな時代に、誰が3年先、5年先を予測した計画が立てられるだろうか。

しかも、今、40代の人間は、10年後に50代になる。自分の10年後の姿さえ描けないのに、会社の10年後を描くことが可能なのか。私には、今から10年前の姿を振り返ってみても、これから10年後の姿など想像もつかない。

私は、3ヵ月先、半年先を考えることで精一杯である。しかも、都度修正して、改修しなければそれさえまともに動かない。これが私の能力の実態であり、現実だ。

ならば、中・長期経営計画の策定をしているよりも、より正確な四半期計画でも考えていたほうが遥かにましである。そして、それさえおぼつか無いというのなら、臨機応変に対応できるようにしたほうが良いのではなかろうか。

柔軟に、迅速に、かつ大胆に変化していけるような組織作りこそ、何がいつ起きても、100年に1回のせいにせずに急激な変化に対応し生き延びられるのではないだろうか。

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投稿者 :堀田信弘: 2009年1月15日 05:23