【堀田信弘の今日の語録】 『この会社は、きっと伸びるだろうな。他の会社と違うことができること自体に可能性を秘めているから。』


経営者について  「活・喝・勝」


経営者は悲観的楽観主義者だ

私が2007年8月に訪れたアウシュヴィッツ強制収容所の入り口には、ドイツ語で「働けば自由になる」との書かれたゲートある。アウシュヴィッツ駅に到着すると、人々は左右に分類された。左側に分類された人々は、このゲートをくぐり、右側に分類された人々は、この収容所に入ることなく、そのままガス室に向かった。

ゲートをくぐれたのは、2割ほどの人々。収容される人々は、どのような思いでこのゲートをくぐったのだろう。

実際には、働いて自由になることもなく、死ぬことで、現実の苦しみから自由になったのにすぎなかった。「働けば自由になる」という言葉を信じた者、信じなかった者、このゲートをくぐった9割以上の人々がここで死んだ。

いつ殺されるか判らない苦痛から、発狂し、自ら命を絶った者も多い。

それでもほんのわずかな人々が生き残った。

「過酷なアウシュビッツの環境で最後まで生を維持させた人間の特性に興味を抱き調査団を組織した。その報告が正確であるならば、生命の維持力と身体的な強靭さの間には何の関係も見出せなかった。そして生命を最後まで維持させた人々の特性は次の3種類に分類された。」と佐久間章行著の『人類の滅亡と文明の崩壊の回避』にある。

その3種類とは、「愛」「美」「夢」のいずれかを持続した人だ。

著には、「アウシュビッツの全員が飢えに苦しんでいる環境で、自分の乏しい食料を病人のために与えることを躊躇しないような人類愛に生きた人々が最後まで生存した。

鉄格子の窓から見る若葉の芽生えや、軒を伝わる雨だれや、落葉の動きなどを美しいと感じる心を残していた人々が最後まで生存した。

戦争が終結したならばベルリンの目抜き通りにベーカリーを再開してドイツで一番に旨いパンを売ってやろう、この収容所を出られたならばカーネギーホールの舞台でショパンを演奏して観客の拍手を浴びたい、などの夢を抱くことができた人々が最後まで生存した。」とある。

彼らは、悲観的ではなく、楽観主義者だったのだ。

楽観主義者とは、前向きな考えを意志的に行う人である。能天気な楽観者とは違う。最悪な状態で、考え得られる悲観的な状況をも、乗り越えようとする強い意志の持ち主である。

「愛」「美」「夢」、何れも経営者にとっても重要な考え方である。そして、楽観主義者であることもとても重要だ。

私は、かつて『マイナス思考とプラス思考』の中で、「私は、マイナス思考を隠し、プラス思考を飾っているだけなのかも知れない。あるいは、普段はプラス思考に見えていても、実は大変弱気になってしまう一面があるのかも知れない。これは、私に限らず誰しも弱いものを持っているものだし、だからと言ってリーダーとして不適格というものでもあるまい。」と書いた。

だから、私は、自身のことを、悲観的楽観主義者だと思っている。

私は、極めて悲観的な人間だが、悲観主義者ではない。悲観主義者は、経営者には向かない。経営には、リスクヘッジも必要だが、リスクを取る覚悟はもっと必要だ。そのためには、リスクを十分に悲観的に捕えた上で、楽観主義に行動しなければならないのである。

経営者にとって、物事を悲観的に考えることは極めて重要である。誰よりもできるだけ悲観的な要素を洗い出し、そのひとつひとつを徹底的に叩いて行く。

そんなに簡単に、そんなに楽な方法で上手くいくはずがないと、将来を悲観し、自分を追い詰めることで、自分への甘えを炙り出す。そして、最後の最後に、その気持ちを乗り越えて、様々な悲観的要因を取り除いて残った答えに全てをかける。

そして、それを信じ、一度決めたことは決して悲観的に後戻りせず、全てを前向きに意図して、意志的に行動する。決して悲観的にならないと、楽観主義を貫く。これが経営者ではないだろうか。

今、世界中は将来不安な、悲観的な状況に陥っている。そして、日本は閉塞感に覆われ、楽観主義者は、浅はかな考えであるかのようだ。

私は昨日から、今年最初のベトナムにいる。

ベトナムは、ギャラップ社が実施した国際世論調査において、世界一の楽観主義者の多く国に選ばれている。悲惨なベトナム戦争においても、将来を悲観せず、前向きに戦い抜いた国らしい。

そのベトナムで、楽観主義を吸収して来ようと思う。

そして、「愛」「美」「夢」。

過酷なビジネス戦争の中で、わずかに生き残れるのには、「愛」「美」「夢」が必要だ。わが社は、その中から「夢」を選び、「夢」を希望として前向きに生き延びたい。

最後まで読んで頂き、感謝申し上げます。

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投稿者 :堀田信弘: 2009年1月19日 05:28