私は、実におっちょこちょいである。忘れ物や、落し物など、様々な経験がある。
お客さまのところに往訪するスケジュールが入っていた時の出来事。言い訳にならないように、前もって言っておくが、私の集中力は高い。それが、問題を引き起こす。
往訪時間に気が付き、慌てて会社を飛び出す。このようなことは茶飯事である。
ある時の出来事は、会社を出て地下鉄に乗ろうとした時だった。
自分がどの会社に行くのか全く判らない。慌てて会社に連絡し、スケジュールを見てもらう。恥ずかしい限りである。
ある時の出来事は、その会社に着いた時だった。
自分が誰とアポを取ったのか全く判らない。慌てて会社に連絡し、スケジュールを見てもらう。恥ずかしい限りである。
先日は、こんなこともあった。
新幹線の中で、パソコンを開いて仕事をしていた。
ふと気が付いたら、ドアが閉まり、次の駅に向かっていた。
電車と言えば、こんなこともあった。
ふと気が付いたら、知らない駅名が出てきた。乗車する時に、逆方面に飛び乗って、目的地からどんどん離れて行っていたのだ。
このような笑い話は、山ほどある。
本質的におっちょこちょいだから、全部とは言わないが、大半は何かに集中している時である。
私がいう集中とは、何かのことに夢中になって一点に集中しているということではない。私が一点に専念している時は、以外に集中力を高めているというような感覚が起きない。
通常、何かに集中しているというのは、周囲の声も聞こえず、余計なことを考えずその一点のことしか頭に入らない状態を言う。
しかし、私の場合は、その定義が違う。
手、耳、目、口などをフル活用して、同時に複数のことを一気に行っているような状態の時、集中力が極度に高まる。
判り易く言うと、音楽を聞きながら、ジョギングをして、メモを片手にこのブログのネタを書いている時に、携帯電話に届いたメールに目を通そうとするような感じである。
仕事で言うと、メールを読みながら、チャットに返信し、エクセルのデータをチェックしているような時だ。しかも、それぞれのタスクは、全て別の相手であったり、別の目的であったりする。
頭の中で、複数のタスクがあたかも同時に動いているように見えるマルチタスクと同様だ。
マルチタスクとは、計算機の用語である。通常、一つのCPUしかないコンピュータは、一つの瞬間に一つの仕事しかできない。一つの命令を順次、一つづつ処理している。そのようなコンピュータでも、複数のアプリケーションがあたかも同時に動くようにするために、CPUの処理時間を短く区切り、別々のアプリケーションの命令を交互に実行するようにしたのがマルチタスクである。
区切られる時間が極めて短いことから、人間にはあたかも同時に複数の処理が一緒に動いているように感じられる。これをタイムシェアリングと言い、この仕組みを取り入れることで、一つのCPUでも複数のタスクを動かすことが実現される。
今の時代なら、何もこんな難しいことを考えなくても、複数のCPUに複数のタスクを分散すれば良いと考えるだろうが、複数のCPUがあってもタイムシェアリングとマルチタスクの考え方は、いまでも有効である。
一方、シングルタスクというのは、一つのCPUが、一つのタスクを他からの割り込みを許さずに、占有して処理するというものである。
私は20年前、スーパーコンピュータのシステムエンジニアだった。
OSをチューニングしたり、メモリ配分を考えながら、最適なマルチタスクが可能となるよう設計をしていた。
ある時、無作為に選んだ10本のプログラムを、①一本づつ順次実行する、②3本づつ同時に実行し、そのうちの一本が終了したら次のプログラムを順次実行させる、③10本のプログラムを同時に実行するというテストを行った。
この実験は、選ばれたプログラムとコンピュータの資源によって、どれが一番早く終了するかを見極めるものである。だから、この三つの方法のどれが必ず早いということは言えない。
だが、総じて、①が一番早くなるケースは極めて限られた条件であることだけは間違いない。もっと言えば、通常の方法で、①を一番早くすることは極めて困難である。もし仮に、そのようなプログラムを意図的に10本選んだとしたら、結果として①が一番早くなったとしても②と③との差は極めて僅かである。
次に言えるのは、③のケースである。このケースも、最も早くするためには、コンピュータ資源十分だという条件が必要となる。もし、そのような状況が構築できれば、仮に③が早かったとしても、②との差は僅かである。
つまり、②の方法が、総じて言えば、実現することが容易であるということだ。
おっちょこちょいの私は、かつてこんな仕事をしていたのだ。
そして同時にその頃の仕事は、私自身をも、いつもマルチタスクが要求されるものだった。一つのことに集中するより、如何に同時に複数処理するかが私の仕事だったのだ。
そのような経験から、一つの仕事に専念することよりも、複数のことを同時に処理するには、極めて高い集中力が要求されることを知った。そしてそれが、ヘンに身についてしまったのだ。それは、効率を優先すること、時間を細分化することに集中するがあまり、そこから外れることには優先順位が低くなってしまうのだ。
一般的に、一つづつしか処理できない人のほうがほとんどである。私のように、②方法で仕事ができる人はとても少ないようである。
ある人は、まとめて10本同時に実行しようとするが、結果として一つづ行うよりももっと遅くなる結果を招く。それは、同時に処理するだけの十分な資源を伴わないからだ。
組織運営的に見ると、一つづつしか処理できない人と、全てを同時に同列に処理しようとする人は、仕事を抱えるタイプで、仕事を分散処理することが苦手で、部下に手伝わせることもできないタイプである。
だが、私のようなおっちょこちょいを見れば、そのような人を批判する資格はない。
そのような人は、そのような仕事の仕方をさせることが、経営者としては重要なのだろうと思うようになった。無理して、マルチタスクを求めるより、その人が最もパフォーマンスが発揮できるやり方で仕事をさせるのが良いのであろう。
仮に、私のようにマルチタスクで処理しようとしても、おっちょこちょいな単純ミスを起こすのだから、着実に仕事をできる人に補ってもらったほうが良いようだ。
私のようなおっちょこちょいが組織に、何人もいては困ることだろう。
組織とは、それぞれを補うことに、意味があるのかも知れないな。
最後まで読んで頂き、感謝申し上げます。
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投稿者 :堀田信弘: 2009年6月24日 05:03