車の渋滞で有名なバンコクから、バイクの渋滞で有名な『躍動感あるホーチミン』にやってきた。何度来ても、毎月来ても、若さと活気に溢れ、躍動感を感じさせる街だ。
街中にクラクションの音が鳴り響き、バイクの音が地響きのように聞こえる。
さらにベトナムに来ると『異文化コミュニケーション』の難しさも痛感する。
先日、退職したベトナム人社員が、自分が担当していた業務のプログラムソースとデータを勝手に盗み出し、全く同じ内容のサイトを立ち上げていることが発覚した。
直ぐに削除するように伝えると、勝手に他人のIDとパスワードを使い、社内のグループウェアからメールアドレスを盗み出し、社員に「盗んだ?何のこと。情報は誰のものでもない。」と一斉にメールを配信した。
驚いたことに、ベトナム人社員は、社員同士で、自分のIDとパスワードを他人に教えるだけではなく、キャッシュカードの暗証番号まで教えてしまうそうだ。暗証番号を教えて、代わりに引き出してきてもらうらしい。
余程、他人を信用しているのだろうか。それとも、情報漏えいの怖さを知らないのであろうか。
ベトナムは、対人口比で、中国を上回るほどのソフトウェアのコピー大国である。ソフトウェアだけでなく、データにも価値を認めていないのか、盗作に対する罪意識はまるでない。
最近では、世界中のアフィリエイトサイトへの不正クリック数が、世界で最も多くベトナム国内からアクセスされているということも報道されている。なぜ中国ではなく、ベトナムなのか不思議だが、それなりにインターネット人口があり、アフィリエイトに対する知識と、金儲けに対する意識があるということなのであろう。
私は以前、イソップ物語の『よくばりなイヌ』について社員に話をしたことがある。大卒者がほとんどのベトナム人社員の中で、イソップ物語を知っている人がほとんどいなかったことには驚いた。
その中で私は、『会社を辞める度に給与が上がるかも知れないが、その度にその人の信頼は下がります。どうせまた辞めてしまうのだろうと思われるような人は、最後には、どこからも雇ってもらえなくなります』と言った。
それは、ベトナム人の離職率の高さを問題視したからだ。
しかし、あれから2年半が経ったが、社員の離職率が収まっていない。2年半前に私の話を聞いた社員は、今ではほんの数人しか残っていない。
これまで会社を辞める時は、皆、突然だった。前述したデータを持ちだした社員も含め、大半が給料日にいなくなっている。給与をもらって逃げるようにして突然来なくなるのだ。
ある社員は、3ヶ月間の日本研修に行く時、1年以内には退職しないと誓約したにも関わらず、帰国後、直ぐに退職した。またある者は、日本での研修を進めたが、1年以内に退職しないということに誓約できないとして断った者もいる。
離職率が高いということは、会社にも問題があるのであろう。今の会社よりももっと良いところで働きたいという感情が起こることは自然なことだ。
ただこれはわが社だけの問題ではなく、研修生制度という中のデータを見ても判る。日本に訪れる外国人研修生の中で、ベトナム人の割合は7%ほどしかいない。ほとんどが中国人である。しかし、疾走する割合が最も高いのがベトナム人である。
なぜなのだろうか。
日本に来て、もっと儲かる仕事があると聞けば、目先のことだけを考えて、直ぐに逃げ出してしまうのだろう。不法労働で働けるだけ働いて、捕まるまで稼ごうという発想なのだろうか。
しかし、そのような感情に陥るのは、決してベトナム人だけではないはずである。それなのに、なぜベトナム人の疾走率が突出しているのであろう。
ベトナムに来て何度も何度も聞かされる言葉に、「ベトナムだからです」というものがある。
渋滞で遅れても、依頼した通りに行われなくても、ベトナムだから仕方ないと胸を張って答える。この仕方ないは、悲観的ではなく、楽観的なのだ。
それにしても、異国の地で、外国人経営者が地元の国の人々と仕事をするのは難しい。しかし、この難しさを知っていれば、考えようによっては、自分の国の経営のほうが遥かに楽であるとも言えよう。
私は、『経験をも上回る勇気を持ち、理屈よりやる気、結果より向かう姿勢、全ては若いからこそ、未知だからことやれることだ』だとベトナムに会社を設立する時のことを『若さを買う』の中で書いた。
経験をも上回る勇気を持ち、理屈よりやる気、結果より向かう姿勢は、若さだからこそ生まれる。しかし、この若さは、時には無謀や、無鉄砲、無責任、無秩序を生むこともある。若さを活かすには、この無謀や、無鉄砲、無責任、無秩序が生まれることもある程度覚悟できる寛容さが求められるのであろうか。
ホテルの外では、朝早くから、バイクの音が響いている。いつの日か、クラクションを鳴らさないような街に変貌するのであろうか。
この国は、幸福度でアジアで連続第1位、世界第5位となっている。また、ベトナムは、国際世論調査において、世界一の楽観主義者の多い国に選ばれているのだ。
悲観的な多い日本人には、手強い国である。
だからこそ、得るものは多いはず。これが私流の楽観主義である。
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投稿者 :堀田信弘: 2009年11月17日 05:05