【堀田信弘の今日の語録】 『この会社は、きっと伸びるだろうな。他の会社と違うことができること自体に可能性を秘めているから。』


悲しい出来事  「活・喝・勝」


不正を生む温床

ベトナム人社員を日本側で受け入れるために、会社から徒歩数分という都心の日本橋にマンションを借りました。もちろん真新しい生活用品も用意しました。

初めて日本に来るベトナム人にとって、マンションでの生活は、ベトナムの一流ホテルのように思えることでしょう。電子レンジ、テレビ、DVDデッキ、冷蔵庫、エアコン、ウォシュレットなど、ベトナムでいま最もほしい電気製品が揃っているのです。

憧れの日本での生活を喜んでほしいとの一心でした。ベトナムに戻ってもがんばってくれるとも思いました。

彼らは大変満足してくれました。ただありがたいとは思ったとして、わざわざベトナムから来るのだからそれくらいの待遇は、当たり前で当然なことだと感じる部分があったのかも知れません。

一方的に、恩着せがましく考えていたのは、完全に間違いでした。

恩着せがましい考えは、見事に期待に応えるように裏目に出ます。また直ぐに辞めてしまいました。仕方なく、次からは退職した場合には、罰則として、研修に関わった航空券などの旅費や滞在費などを返還することを求めることにしました。誓約書にサインさせ、日本に行かせました。

それでも、罰則など気にもせず、平気で辞めてしまいます。しかし、旅費などを返還するつもりは微塵もありませんでした。

次第に「ベトナム人はサインしてもどうせ守らないのだ」と思うようになって行くのです。それ以来、日本への研修は取りやめることにしました。残念なことです。

彼らのためにと思ったことが、彼らのためではなく、自分の会社のためと受け取られたのかも知れません。結果として、日本に研修に来た社員は、会社のためにならず、彼ら個人のためとなり、キャリアアップに繋がり転職の機会を与えただけだったのです。

空回りでした。

先月、ベトナムの事務所でタイムカードの不正が発覚しました。

早く来た社員が、遅れてくる社員の代わりにタイムカードを打刻していたのです。会社に来ない人の分まで打刻されたことにより判明しました。

関与したと思われる8名について、帰宅させ、翌日まで自宅待機するように指示しました。

すると8名は、ベトナム労働局に対し、会社の就業規則が法に反している部分があるとして訴えたのです。

自分たちが犯した不正のことよりも、会社が不正をしていることに話をすり替え、会社が混乱することで、懲戒解雇ではなく、自分たちが有利になる方法で会社の譲歩を引き出そうとしたのです。

ベトナムに会社を作った時は、タイムカードの導入はしていませんでした。日本でもタイムカードを導入していなから、日本と同じようしてあげたかったのです。

しかし、その気持ちとは裏腹に、次第にルーズになって行きました。

ほとんど罰則のなかった就業規則が、問題が起こる度に、次第に厳しくなっていったのです。

遅刻や早退、欠勤も次第に酷くなって行きました。

それまでは月給制で、土日、さらには日本の祝日も休んでいましたから、ほとんど残業をしないベトナム・子会社の労働時間は、日本よりもはるかに少なくなっていたのです。そのような状況で、生産性が高まるはずがありません。

タイムカードを導入し、遅刻や欠勤に対し、厳しい罰則を設けるようにしました。

ボーナスも、遅刻や欠勤が多いものは、大幅に減額されるように査定しました。さらに土曜日も出勤させることにしました。

しばらく運用してみると、遅刻が多い人は決まって多く、全く遅刻しない人もいました。遅刻の少ない人ほど、仕事も多くやるように思えました。

実際の労働時間を調べてみると、やはり遅刻や欠勤の多い人ほど、比例して労働時間も少なくなっていたのです。遅刻しても、その分を補おうとしないのです。今度は労働時間に応じた給与制度に変更するようにしました。

まじめに多く仕事をしている人、そうでない人が月給制で、多少控除されたとしても同じように給与がもらえるのは、まじめな人が救われないと考えたのでした。

今でも、一生懸命にやっている社員は、日本でもベトナムでも同様に報われるようにしたいと思っています。

ところがこの考えは、不真面目な人に対し、より一層に不正を犯すまでに不愉快にさせていったのです。

不正が生まれる温床を自らが用意したのかも知れません。誰しも不正などしたくないのに、不正をしなければ減給されてしまうという状況となっていたのです。

規則を厳しくすればするほど、それに対して息苦しく感じる人が出るのは自然なことです。息苦しくなれば、時々息をつこうとすることもあるでしょう。不幸にも、不正という形で表れてしまったのです。

「ベトナムでは普通のことだ」という話も聞こえていました。でも、日本の仕事をしている以上、納期の意識も含めて、時間に対して厳しく指導するのは当然だと思っていたのです。繰り返し伝えれば、きっと判ってくれると思ったのです。

ベトナムでは普通のことでも、世界では通用しないことを知らせたかったのです。

今でほとんどのベトナム人社員は遅刻しなくなりました。しかし、会社を一歩出れば、周囲はそんなに時間に厳しいところはなく、しかも、新しく入ってくる社員には、中々その意味が理解できなかったのかも知れません。

内心では「自分たちの会社は厳しい」と思うようになっていったのです。

やがて厳しいことは嫌なことと思え、「会社が嫌いだ」という人も出るようになったかも知れません。

先週、2年前に起きた中国での毒餃子事件の犯人が逮捕されました。犯人は、その工場で働く臨時社員でした。犯行の動機は、一緒にその工場で働く妻が出産した時に、休暇を取ったためボーナスをカットされ、会社が嫌いになったというものでした。

犯人は、出産という一生に一回のことが許されず、理不尽で、道理が通らないと思ったのでしょう。その怒りの感情は、犯罪を犯すほどまでに会社を嫌いになったのです。憎いほどまでに、自分の会社が嫌になったのです。

同じようにベトナムの規則を厳しくしたことは、同じような感情を生むきっかけを作ったのかも知れません。

彼女たちを追い詰め、不正を起こすような悪い社員にしてしまったのです。彼女たちが悪くなるようにしてしまったのかも知れません。

不正を生む温床を作ってしまったのだと反省しました。

(次回に続く)

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投稿者 :堀田信弘: 2010年4月 7日 05:55