小学生の頃、ある発表会に参加し、生まれて初めて大勢の人前に立つ時がありました。余りにも緊張してドキドキしていると、付き添ってくれた先生が、「手の平に人という字を書いて飲み込んでごらん」と言ってくれたのを覚えています。
でも効果があったのかどうかは定かではありませんが、生まれて初めて極度に緊張すると息苦しくなるという体験をしたことは今でも忘れません。そのような体験が功を奏してか、今では大勢の人前で話すことに少し慣れを感じるようになってきました。
さて、「息」という字は、自分の心の状態を表すと書きます。気分が滅入っていると、ため息が出たり、退屈だとあくびが出たりしますね。緊張してドキドキしていると、息も荒くなります。息は、自分の心の状態を表すのです。
人間は、息を吐くためには、息を吸う必要があります。吸うから吐くのか、吐いたから吸うのか、どちらが正しいのでしょう。
通常、人間は、吸うことも吐くことも意識していません。意識していないからこそ、自分の心の様子が表れるのかも知れませんね。
水泳での息継ぎの場合には、吐くのが先です。水の中で思い切って息を吐いてしまえば、水の外に口を開けて顔を出すだけで、意図的に吸い込まなくても自然に空気が入ってくるというものです。
これと似たようなものにヨガがあります。私は先日、子供たちと簡単なヨガを体験してきました。
ヨガでは、まず気管支や肺に残っている空気を、鼻から息を吐くところから始めます。できるだけ多く、長く吐くことができるようにするそうです。
初めての人や慣れていない人は、中々十分に吐くことができません。それは、呼吸を意図的に調整することに慣れていないからだそうです。私たちは普段、息を意図的にコントロールすることなどしないですね。
呼吸というのは、意志とは無関係に内臓の働きを支配し、調節する自律神経によって行われます。自律神経は、心臓や呼吸器系の働きを活発にする交感神経と、逆に心臓などの働きを抑えてリラックスさせる副交感神経からなっています。
ストレスや緊張などによって、交感神経が過剰となって、心臓が強く働き過ぎて高血圧や肩こりなどの症状を招くことが多くなります。
本来、自律神経は、意図してコントロールできるものではありませんが、呼吸を意図的にコントロールすることで、自律神経を揺さぶり鍛えることができるのです。
人間は、息を吐く時は副交感神経が働き、吸う時は交感神経が強く作用するそうです。そこで、できるだけ長く息を吐くことで副交感神経が刺激され、体をリラックスさせる効果があり、自律神経を正常作用させるようです。
つまり、息を吐くということは、体や心をリラックスしようとする働きのようです。逆に息を吸う時のほうが、交換神経を刺激し、緊張感を生むのかも知れません。
緊張した時には、深呼吸をと考えがちですが、自律神経と呼吸器の関係から考えると、息をゆっくり、長く吐くことのほうが、緊張をほぐすというのは以外な発見でした。
このように体の働きを詳しく知ると、心と体というのは、一体であることが良く判ります。心が体を動かしているというよりも、体が心を動かしているかのようです。
心と体のバランスが重要だと言いますが、心と体は別々なものではなく、一体なのです。
健康というのは、心も体も両方とも健康でなければならないのです。
人間の体には、心という臓器は存在しません。取り出して見てみることも触ってみることも出来ないのです。ですから、心の病気になっても、外科的に手術をして直すということはできないのです。
しかし人間にとって、心というのは、なくてはならない大切なものです。心も体と同様に、健康でなくてはなりません。心と体とは密接な関係があり、心の健康が損なわれれば、体の健康も損なわれ、体の健康が損なわれれば心の健康も損なわれるのです。
それでは、どのようにしたら心の健康を保つことができるのでしょう。あるいは、体の健康を保つために運動を心がけるように、心の健康を保つために心がけることはどのようなことなのでしょうか。
ここでは専門的なことを知ったり、学んだりするところではありませんので、違った角度から考えてみることにします。
体調を崩す、病気になるというには、必ず何らかの原因があるはずです。不規則な生活をしていたり、寝不足や、過労などを続けていれば、何れそれが積もって体に影響を及ぼすだろうことは素人でもわかります。
同様に、心のバランスを崩したり、悩んだりストレスに感じたりするには、必ず何らかの原因があるはずです。
体の病気の場合には、その原因を取り除くために投薬をしたり、外科的治療をしたりします。しかし、心の場合には、単にその原因を取り除けば良いということにはならないのです。
例えば、今の職場で働くことがストレスであり、その原因がその職場での人間関係だとします。そこまで原因がはっきりしているのだから、原因を取り除けばよいかというとそうではないと思うのです。
勿論、根本治療として、根治させるのは、その職場を辞め、別の職場に移るということも考えられることでしょう。体に変調を来すほどの場合なら致し方ありませんが、そのような逃避行動ばかりを繰り返していたら、どの職場に行っても同じことを繰り返すだけです。
ストレスは悪という考えがありますが、一概にはそうとは言えません。ストレスがあるからこそ、そのストレスを乗り越え、解消しようとする意思が働くのだと思います。
このことは、体を鍛えるために運動するようなことと同じだと思うのです。心を鍛えることを意識して、努力しようとしなければ、心はどんどん弱くなってしまいます。ストレスから逃げるのではなく、心を強くするためのきっかけだと考えることも重要なのです。
だからこそ、様々な経験や体験をした人ほど、力強い精神力を持っているのです。それは、生まれ持ったのではなく、経験や体験によって心が鍛えられたのです。当然、経験が浅い人ほど、初めての出来事にはストレスを感じることでしょう。
重要なことは、そのストレスとどう向かい合い、そしてさらに、ストレスを解消すべく、リラックス、リフレッシュするような自分なりの生活の楽しみ方を確立することが重要なのです。
避けて通ることよりも、受け止められるように心を鍛えることが大切なのです。そして、心に栄養や、休養も与えることも大切なことでしょう。
このようにして、目に見えない心というものを、自分なりに可愛がって、メンテナンスすることが、楽しく生きる術ではないでしょうか。これがストレス社会で生き延びるために、ストレスと向かい合う方法だと思います。
逃げないこと、立ち向かうこと、そして、気分転換を図ること、溜めすぎないこと、これが心のバランスを保つことだと、私は思います。簡単に言えば、人それぞれが、それぞれの考え方を持って楽しく生きれば良いだけのことです。
生活を楽しめば良いのです。楽しもうとするのです。楽しいと思うのです。簡単なことです。
(次回に続く)
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投稿者 :堀田信弘: 2010年7月28日 05:40