【堀田信弘の今日の語録】 『この会社は、きっと伸びるだろうな。他の会社と違うことができること自体に可能性を秘めているから。』


求める人材  「活・喝・勝」


耳からの情報よりも目からの情報

日本でのホームグランドならまだしも、交渉場所が海外などのアウェーなら、それは相手に合わせて、相手を知らなければ勝てるはずがないのです。

アウェーであれば、その国の人の特徴や時代背景、歴史を知っていることも重要でしょう。

例えば、ベトナム人は、こちらが10秒ほどの質問をすると、相手は5分以上の返答をしてきます。途中で通訳するように静止しても、通訳が「途中だから」と言って通訳のしようがないのです。

どんなに単純な質問で、YESかNOだけの返答を求めているだけなのに、YESかNOの回答は5分待っても得られません。

これはベトナム人の親切なところなのかも知れませんが、彼らは、答えを言う前に、一生懸命に状況を理解してもらうために、詳しい背景や経緯など説明から話始めるのです。

このようなやり取りをしていれば、数時間などあっと言う間に経ってしまいます。通常、対等に時間を配分したとしても、通訳が入れば2倍かかるのが普通ですが、ベトナムの場合だと、3倍もの時間を費やしてしまうのです。

日本人同士の打ちあわせで1時間かかるとすれば、3時間かかるということです。しかも、3時間のうち、ベトナム時間が話している時間は2時間半ほどになるでしょう。こちらは僅か30分しかないのです。それでも、交渉を上手く進めなくてはならないのです。

このような状況を知っていなければ、途中で投げ出してしまうかも知れませんし、短気な人や、完璧主義な人では、交渉はまとまらないことでしょう。

このように交渉とは、相手の状況を知り、しかもタフに付き合う根性がなければならないのです。

これまで様々な国で交渉をしていますが、私が知る限りでは、ベトナム人が最も交渉が難しいと思います。それほどまでに彼らは、タフなのです。そして、交渉上手なのです。

考えてみれば、交渉相手の社長は、私と同年代とありながら、幼年期にはまだベトナム戦争の最中だったのです。戦争という恐怖と、飢えと戦い、必死で生き延びようとした経験がある人と交渉するのですから、昼食くらい抜く程度は当たり前なのです。

同じ年代の人間同士でも、戦争経験者と対等に交渉することは、至難なことなのです。それは、彼らが悪いのではなく、そのような環境で生き、歴史を背負っているのですから、当然なことなのです。

これまで様々な交渉をしてきましたが、外国での交渉の難しさは、言葉が通じないことではないのです。

仮に、英語が堪能であったとしても、英語が堪能なベトナム人と対等に交渉することは困難です。

戦争経験をしているベトナム人と対等に交渉することは、言葉が通じたとしてもそのタフさと、交渉慣れしている彼らと、戦争を知らない軟弱者が対等に交渉できるはずがないのです。

アメリカにも負けなかった民族と、アメリカに負けた民族が対等に交渉しようとしても、プライドの高いベトナム人がそう簡単にこちらを認めてくれるはずがないですね。あたかも、まずは、信頼を勝ち取るところから学べと教えてくれているかのようです。

それともう一つ、交渉で重要なことは、言葉ではない、コミュニケーション能力が求められえるということです。

通常、日本人同士の場合、言葉が通じるから、コミュニケーションが上手く行っていると思われることでしょう。しかし、実は、コミュニケーションにおける言葉の割合は、僅か15%ほどにしか過ぎないのです。

言葉は、耳から聞こえる情報です。一般的に耳からの情報は15%で、目からの情報は80%を占めていると言われています。残りの5%は嗅覚と触覚と味覚なのです。

つまり、耳で聞いた言葉の意味というのは、15%ほどで、コミュニケーションにおける全体の要素を占めるのは、目から見える表情などの印象や、身振りなどの仕草、動きなどが大きく影響するのです。

日本人が外国人と交渉する際、事を難しくするのは、日本人の表情が乏しいことも大きな要因であると言えることでしょう。

日本人は、中でも笑顔を出すのがどうやら苦手なように思えます。笑顔が見えない人のことを、皆さんならどう感じますか。

恐らく、日本人同士ならこのようなことは感じないかも知れません。「笑顔を出しているつもりだ」と反論するかも知れません。しかし、笑顔と同時に、それをリアクションで表現すること、つまり身振り手振りが少ないのです。

一方、外国人のそれは、日本人からすると大げさに見えることでしょう。例えば、先日、お客さんの会社に通訳と同行する機会がありました。

事務所に入ると、ユリの花が飾ってありました。同行した通訳は、そのユリの花にアレルギーがあるらしく、入った瞬間、血相を変えて、鬼のような顔つきになって、大きく手を開いて、花を追い出してという身振りをしました。

その間、全く言葉を発していませんが、誰もが一瞬でその様子から簡単に想像できるのです。もし、日本人が、日本の事務所で、訪れたお客さまがそのような行為をしたらどう思うでしょう。むっとするかも知れませんね。

日本人は、大げさにすることや、表情に出すことのほうが良くないとされているから、表情が乏しくなるのは当然なかも知れません。

私の妻は、自閉症に関する専門家です。しかも、我が家には、自閉症の長男がいます。もちろん、言葉でのコミュニケーションはほとんどできません。

妻によると、自閉症の人は、外国人のほうがコミュニケーションがしやすいと言うのです。元々言葉によるコミュニケーションができない分、目から入る情報には極めて敏感です。

そのためか、身振り手振りによるアクションが見えると、自閉症の人でも、同じく、アクションで返そうとするのです。

このことから、人間というのは、耳から聞こえる言葉よりも、目で見える情報のほうが遥かにコミュニケーションに影響することが判ると思います。

さて、リーダーと言うのは、伝えることが仕事です。交渉術というようなテクニカルなことよりも、どうしたら自分の考え方や、気持ちが伝わるかということを常に考えなければならないのです。

しかも、それは単に言葉を発するというものではありません。言葉を並べれば良いというのではないのです。目から受け取る情報も踏まえて伝えなければならないのです。

(次回に続く)

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投稿者 :堀田信弘: 2010年8月21日 05:31