今回、ベトナムでの交渉を通じて、様々なことを学びました。日本でのやり方や考え方が必ずしも正しいのでもなく、通用するものではないということを痛感したのです。
交渉の場所は、ベトナムです。日本というホームグランドではないのです。アウェイという相手側の場所で戦わなければならないのです。
ホームとアウェイと言葉は、サッカーの試合で使われます。ホームというのは自分のホームグランドでする試合の事で、アウェイというのは相手側のスタジアムで行われる試合の事です。
サッカーの場合、ホームとアウェイでは勝率が全く異なります。通常は、自分のホームグラウンドで戦うホームの方が有利で、勝つ確率が高いと言われています。
国際試合などでは、相手国の滞在ホテルで下剤を飲まされ、体調不調で走ることができないなどということまであるそうです。つまり、それほどまでに敵地で戦うには、何をされるか判らないということなのです。
サッカーの場合、会場の雰囲気などの影響もあると思いますが、熱狂的なホーム側の応援により、レフリーのジャッジまでホーム側に有利になるのです。
しかも、サッカーのグラウンドは、規定内であればピッチの大きさは様々であり、芝の状態など自分のグランドのことを熟知しているホームのほうが俄然有利なのです。
そもそも遥か遠くからやって来て疲れも時差ぼけも残りながら、自国とは異なる気候の下で戦うのですから、アウェイのほうが不利に決まっています。
そのためサッカーでは一般的に、ホームとアウェイでは戦い方が全く異なると言われています。
簡単に言えば、アウェイではなかなか勝てないので、あわよくば勝利、最低でも引き分け狙いの試合運びをします。どちらかと言えば守備的な陣形を組みます。もちろん、ホームであれ、アウェイであれ、最初から負けても良いことなど考えていないのは当然です。
一方、ホームでは勝たなくてはいけないので攻撃的な布陣で臨むのが普通です。しかも、ホームでは自分のためのファン、お客さんが沢山来ている訳ですから、営業的にも勝たなければ、次回からの集客にも影響し、しいてはチームの存続にまで影響してしまうのです。
このようにホームとアウェイでは、戦い方も異なれば、精神的なプレッシャーなども異なってくることでしょう。
重要なことは、異なるということを十分に理解し、不利な環境なら不利な環境なりの戦いを、有利な環境でも気を抜かずに戦うということです。
そのようなことを考えなくても済むくらいに強いチームになれば良いという意見もあるかも知れません。場所がどこであれ、環境がどうであれ、どこで戦っても勝てるようにすることのほうが重要だという人もいるでしょう。
しかし、それは正論です。正論は、間違いではありませんから、強い論理です。だからその考えを正しくないとは言いませんが、だからと言って、ホームとアウェイとの違いを無視しても良いとはなりません。
ホームとアウェイでは明らかに異なるのは歴然としていますし、その違いを理解して、それに応じた戦いをすることだって正論なはずです。誰も、アウェイだから負けても良いなどと思っているのではないのです。
どちらで戦っても勝ちたい気持ちに変わりないのは当然なことです。ここで知ってほしいことは、ホームとアウェイでは明らかに異なるということなのです。
ところが、チームの上層部である経営者が、チームと一緒にアウェイに出かけず、いつもホームにいるようでは、チームがアウェイで苦しんでいることを知ることもできないでしょう。知らなければ、いつまで経ってアウェイでは負け続けることでしょう。
ホームでは勝てるのに、アウェイではなぜ勝てないのかと悩んでも仕方ありません。いつも勝つことを考えることは当たり前ですが、アウェイではどうしたら負けないかを考えなければならないことを知らなければならないのです。
今回、ベトナムでの交渉は、まさにアウェイでの戦いでした。言葉が通じないどころか、法律も当然異なります。風習や考え方も異なります。
ビジネスの世界でも、ホームとアウェイでは、サッカーと同様に、まずは異なるということを理解しなければなりません。
しかし、そのことは現場にいないと中々理解してもらえないのです。最も辛いことは、アウェイの現場で戦っていることよりも、ホームとアウェイとでは異なるということを理解してもらえないことなのです。
当然そのことは、試合にも影響します。場合によっては、アウェイで苦しい戦いを強いられているところに、さらに足を引っ張られるような二重の苦しみに陥ることもあるのです。
「なんでそんなことも出来ないのか」「いつもと同じようにしろ」とホームと同じことを要求されても、出来ないことは出来ないのです。
それは精神的なことではありません。国が異なれば、法律が異なります。しかも、日本と比べ、ベトナムはまだまだ発展途上であるのです。だから、法律ではなく、国としてのインフラ整備が十分に整っているとは言えないのです。
しかもベトナムという地は、35年ほど前まで大変な戦争をしていたところです。ベトナムが世界で150番目にWTOに加盟したのは、まだ3年ほど前のことなのです。勿論、今となっては数少ない共産圏であることも知らなければなりません。
ベトナム人は、とても誇り高くプライドが高いです。日本に対しては親日だと言われていますが、アメリカと対等に戦った民族ですから、そう簡単に受け入れてくれるものではありません。
議論が大好きで、こちらが一言いうと、ずっと話続けてきます。通訳に一生懸命に説明するあまり、通訳と議論になってしまうこともしばしばです。
時々声を荒げ、大きな声で怒鳴りつけるようなこともあります。日本人も表情に乏しいと言われますが、ベトナム人の中には全く笑顔を見せない人も多くいます。
宗教も仏教が多いですが、同じ仏教でも日本のような大乗仏教と小乗仏教では、全く異なる宗教と言えるくらいに異なることでしょう。しかも、キリスト教の相当数います。ベトナム戦争後に、キリスト教徒がどんどん増えているそうなのです。
私は10年も前からベトナムに来ていますので、そのことは十分に知っていました。しかし、今回の交渉相手は、その程度の上辺だけの知識では何の役にも立たなかったのです。
(次回に続く)
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投稿者 :堀田信弘: 2010年9月 4日 05:15