モチベーションというのは、他人から与えられるのではなく、自分自身で高めなければならないことが判ったかと思います。
他人からモチベーションを下がられることがあっても、それで下がるような程度のモチベーションしかないのに、その他人を批判するようなことなどできないのです。
モチベーションを下げられたと批判しているということは、そもそも自分自身のモチベーションなど無かったということなのです。
モチベーションが無いということは、明確な目標がない、だから意欲がない、つまりはやる気がない状態です。このような状態ですから、他人から何か言われたくらいで「モチベーションが下がった」と本末転倒なことを言うのです。
モチベーションが下がるどころか、最初からモチベーションなど無いのです。言わば、無気力、無関心、無責任なのです。だから他人のせいにするのでしょう。
このような人間が組織にいては、組織全体のモチベーションが下がってしまいます。そこで重要なことは、上司の役目です。
繰り返しになりますが、上司の役目は、一人ひとりのモチベーションを上げることではありません。モチベーションを高めるのは、自分自身なのです。そして、上司は、個別ではなく、組織という全体のモチベーションを上げるのが仕事なのです。
組織は、人の集まりですが、組織全体のモチベーションを上げることを、個人のモチベーションが上がるのを待っているようでは上司の存在意義がありません。中にはモチベーションの低い人もいるかも知れませんが、それでも全体のモチベーションを高めるのです。
そのために上司が行うことは簡単です。
それは、個人がモチベーションを上げるのと一緒で、最初に具体的な目標を組織に持たせることです。そして、それを達成した後の満足感、達成感に応えられるものを用意することなのです。
私は、それをインセンティブと呼んでいます。
私が考えるインセンティブというのは、単にお金だけではありません。インセンティブというのは、奨励・刺激・報奨の意味ですが、それを与えるのはお金だけでないのだと思っているのです。
もっと言えば、お金でしかシンセンティブを上げることしかできないとすれば、マズローの欲求に照らし合わせても、あまりにも貧弱です。
例えば、お金以外のインセンティブとして、仕事の内容、責任の重さ、仕事の自由度など、与えられる奨励・刺激・報奨は、実に様々なものが考えられます。
ところでインセンティブと罰を用いた面白い実験結果があります。
ある幼稚園での実験です。
ある幼稚園では、終園時間を過ぎても中々園児を迎えに来てくれない親が多いことに悩んでいました。
そこで、罰則制度を取り入れるようにしたのです。もし終園時間を過ぎた場合には、1分でも過ぎたらば30分の追加料金を、31分過ぎたらば1時間分の追加料金を支払ってもらうということにしたのです。
すると、遅刻してくる親が減るどころか、大幅に増えてしまったというのです。
これまでは、遅刻しても無料で面倒をみてもらっており、先生にも残ってもらっていて申し訳ないという気持ちで少しでも遅刻しないようにしていたのです。
ところが、罰則として捕らえるのではなく、お金さえ払えば遅くまで預けられるというようになってしまったのです。しかも、1分でも遅刻してお金がかかるのなら、30分ギリギリに来たほうが良いということになったのです。
一方、別の幼稚園ではこれとは別の方法を試しました。
それは毎月の料金を30%近くアップするという方法です。しかし、その月に遅れてくるようなことがなければ、40%減額し、元の金額よりも安くするとしたのです。つまり皆勤賞であれば、これまでよりも安くなるということです。
後は、回数に応じて、減額するというインセンティブに取られ、幼稚園では、仮に全員が40%減額となり、以前よりも10%も収入が減っても、職員の残業代を考えると、効率的であると考えたのです。
その結果、遅刻してくる親は大幅に減ったそうです。
人間というのは、このように罰則やインセンティブにより、損得勘定を考え、それによって行動する気持ちが変わるのですね。少しでも安くなるのならと考えるのも自然な考えですし、どうせ支払うなら目一杯面倒見てもらおうと考えるのも自然なのです。
このようなことは、組織を運営、経営していると、同じようなことを沢山経験します。そして人間は、とっさに損得を考える動物なのだということを痛感することでしょう。
今回の実験で、遅刻する人を減らすというのが最大の目標であるならば、罰則よりもインセンティブのほうが遥かに効果があったということが判るでしょう。
インセンティブというのは、外部から与えるモチベーションのようなものなのです。目標と意欲を与え、それを達成した時の満足度を与えるというものです。
個人個人のモチベーションは、インセンティブを上げる程度ではあがりませんが、組織全体を動かす効果はあるのです。このことは大きな意味があります。
インセンティブの付与が、イコールある人のモチベーションと考えられるよううでは、あまりにもモチベーションに対する考えが浅いです。
もし組織の中の多くの人が、そのような状況だとしたら、まだまだインセンティブを付与するような段階にはないかも知れません。
インセンティブというは、あくまでも組織に対する奨励・刺激・報奨であって、モチベーションのほんの僅かな一部にしか過ぎないのです。それは組織運営上のものなのです。
ただ、私がもしあの幼稚園の経営者なら、何れか一方の方法を取り入れようとは思いません。親をお客さまとして捕らえれば、もっと工夫できることがあろうかと思います。
私だったら、毎日きちんと迎えにくる人には割安感を与え、どうしても遅れてしまう人には、分単位に課金して、通常料金よりは割り増しをするものの、何時まででも迎えに来るのを待ってあげるようにしますね。
つまり、お客さまのニーズに応えることを考えます。遅くまで面倒をみてほしいという人と、そうでない人のニーズが混在していますが、どちらもお客さまのニーズには違いありません。片方のニーズだけを受け入れれば、もう一方の満足度は下がることでしょう。
まず経営者が考えることは、どちらのニーズも取り入れるように考えることだと思うのです。ニーズが複数あって、最初からそのニーズを絞ってしまうのではなく、両立が図られるかが重要だと思うのです。
その上で、どうしても一方を切り捨てなければならないのであれば、今度は、それに特化し、そしてその特化した価格やサービスが他社と差別化できるようにすることが重要なのです。これは、徹底的にニーズの両立が難しいと結論付けてから行うべきだと思うのです。
(次回に続く)
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投稿者 :堀田信弘: 2010年9月30日 05:23