決断と判断は違います。この違いを理解しながら、経営者には、日々大きな決断が求められるのです。
明日は、重要な臨時取締役会が開催されます。当日は、議題に沿って、淡々と議決されることでしょう。
本来なら、取締役会というのは、会社の中の最高の意思決定機関でありながら、重要な議題について、それぞれが対等な取締役として議論する場でもあるのです。
株主、取引先、顧客、そして従業員のことを考えながら、各取締役は、自分自身の考えを表明しなければならないのです。
当然、反対意見を言わなければ、賛成したとみなされ、その決議事項に対し、取締役は共同で執行責任を負います。
もし、反対意見があれば、そのことは議事録に記載され、明確に自分は違った考えであったということが後々まで証明されるのです。
しかし、中小企業の取締役会で、そこまで厳密に行っているところはあるでしょうか。
恐らく形式的なものであったり、あるいは開催すらせずに、議事録だけを作成して終わりにしているかも知れません。
わが社の場合、定例の取締役会は四半期に一度開かれます。社外取締役も含め5名の取締役と、監査役の6名が参加します。代表取締役が議長になって、取締役規定に従って議事進行が進められ、賛否の確認も行いながら、議事録も作成されます。
取締役会の議題は、事前に、毎月開催されている4名の社内取締役が参加する常務会で議論されることになります。そして、そこで出された内容を精査して、代表取締役が取締役会を招集するのです。
極めて一般的な定款に記述されているような方法です。
しかし、わが社の場合には、会社の中の最高の意思決定機関とは名実ともになっておりますが、重要な議題について、それぞれが対等な取締役として議論する場にはなっていないのが実情です。
議論する場は、常務会で、そこでの議論は、自由であり、規制はありません。しかし、法的にも社内的にも常務会というのは、意思決定機関ではありませんから、意見が出されるだけで、しかも、各取締役の間は、上下関係であり対等ではありません。
さて、話を冒頭の決断と判断は違うということに戻します。
このことは、必ずしも取締役会や常務会のような形式的な会議体を表すのではなく、トップの意思決定についてです。
どんなに取締役会が会社の最高意思決定機関だと言っても、トップの意志と取締役会の意思が異なるようなことがあるようでは、トップがリーダーシップを取れるはずもなく、トップも単なる合議制の中の平取締役と同等となってしまいます。
しかし、取締役会の中では対等であったとしても、現実の執行場面では、代表取締役と通常の取締役では全くその責任の重さは異なります。
このことは、部長と部員、事業部長と部長との間であっても同様で、意思決定をできる権限を持っている人と、その意思に従う人とでは、全く責任の重さが異なるのです。
私は、以前から、頭で考えたことが「判断」とすれば、理屈ではなく心で考えたことが「決断」だと思っています。
つまり、決断と判断の違いは、頭で考えたか、心で考えたかということだと思うのです。
心で考えるというのは、頭で考えに考え抜き、腹を決めて、心から、「よし、これで行こう」と決心し、迷いを断じて、自らの答えを心から信じることなのです。
一見、判断も決断も答えを出すという意味では同じです。しかし、心から迷いを断じて自信を持った答えを素早く出すというのは、簡単なことではありません。
判断とは違うのです。頭の回転が速い人ほど、自分では素早い判断を出していると自負している人がいますが、決断は、素早さより、迷いを断じ、確信することなのですから、軽い答えは、決断ではないのです。
判断というは、過去の経験から、メリット・デメリットを考え決定されていることが多く、、経験則ということになります。
だから、数多くの経験を積んでいる人ほど、若くて経験が浅い人よりも正確で的確な判断ができることでしょう。
しかし、決断というのは、多くの場合、経験したことがないことに対し、答えを出す必要が多いものです。
決断は、過去の経験に基づかず、自分の意志により、決定するのです。しかも、選択肢もいくつもあり、とても大きなリスクがある中から、一つだけを選んで、その選んだ全ての責任を負わなければならないのです。
リーダーが行うことは、判断ではなく、決断なのだと思います。これまでの経験から導き出せない事柄に対して、潔い決断ができるかということが、真のリーダーとして問われるのです。逆に言えば、決断が行えるのは、リーダー以外にいないのです。
決断したことは、決して後悔しません。小さな判断の違いにはこだわらないのです。方向を心から決めるのが決断ですから、多少の方法の違いはどうでも良いのです。これが私の決断に対する考え方です。
小さなことでも、これからのことを考えることは、必ず決断が必要なのです。未来、将来というこれからのことは、リーダーの決断次第で大きく変わって行くのでしょう。
判断は誰でもできるが、決断は、リーダーしかできないのです。そして、正しい判断は、経験豊富な人ほどできるかも知れないが、決断は、経験に関係なく、ゆるぎない自分の意思を固めることができる人でなければできないのです。
明日は、形式だけですが、緊急取締役会です。そこで決定されることは、わずかなことです。小さなことです。
しかし、このことにどれほどの時間を費やし、悩み苦しんだことでしょう。
でも、もう決断したことに迷いはありません。
決断するまでには様々な判断材料も必要ですし、途中には大きく迷うこともあることでしょう。でも、迷いがなくなるまでは決断とは言えないのですから、それで良いのです。決断できるまでは、迷い苦しめば良いのです。それが決断なのですから。
(次回に続く)
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投稿者 :堀田信弘: 2011年5月15日 05:26